日本酒は一定以上のアルコールを含むアルコール飲料なので、賞味期限は設定されていません。
そのお酒にとって適切な環境下であれば、数年~十数年という長期間が経過しても飲むことが可能ですし、銘柄によっては熟成してさらにおいしくなるものもあります。
ただし、これはあくまで「適切な環境下」であればの話。
不適切な状態に置かれていた日本酒は、変質・劣化しておいしく飲むことができなくなってしまいます。
日本酒の種類別の保管に適した温度は以下の通りです。
日本酒の種類 | 保管に適した温度 | |
---|---|---|
開栓前 | 開栓後(早めに飲み切る) | |
普通酒・本醸造・純米酒 | 常温(15度程度) | 冷蔵(5~10度前後) |
吟醸酒・大吟醸酒 | 冷蔵(10度以下) | |
純米吟醸酒・純米大吟醸酒 | 冷蔵(10度以下) | |
生酒(生貯蔵酒) | 常温(15度程度) | |
生酒(本生、生詰め、生原酒) | 冷蔵(10度以下) |
日本酒の賞味期限について詳しく知りたい方はこちら
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開栓前の日本酒をおいしく保存する方法
日本酒の保存は冷暗所が基本
どんなタイプのお酒なのかによって若干違ってきますが、基本的には光や振動の影響が少なく、温度変化の緩やかな冷暗所(15度前後)が日本酒の適切な保管環境とされています。
日本酒は瓶詰めの状態でも、外部からの刺激によって少しずつ味や香りが変化し続けています。
例えば、日本酒に光が当たり続けると「日光臭」という一種の悪臭が発生することがあります。
振動や温度変化も同様で、日本酒の成分の化学変化を促進し、味や香り、色味の変質につながってしまうのです。
ただ、意図的に直射日光に当てたり高温環境(20度以上)に置いたりしない限り、未開封のお酒の変化スピードはそう速くはありません。
何年も寝かせておこうと考えている場合はともかく、通常は完璧な環境でなくても大丈夫です。
そのため、日の当たらない部屋の戸棚の中やシンクの下の収納などが、家庭内での保管場所として推奨されているのです。
吟醸系や生酒などは冷蔵庫などの低温環境が必要
日本酒の保管は基本的に冷暗所で十分ですが、吟醸酒や大吟醸酒、生酒など例外的に冷蔵庫レベルの低温環境(10度以下)が必要なタイプのお酒もあります。
吟醸酒や純米吟醸酒などいわゆる「吟醸系」のお酒は、低温長期発酵によって造られる繊細なお酒です。
そのため一般的な日本酒よりも外部刺激の影響が大きく、常温程度の温度でもどんどん変化が進んでしまう恐れがあります。
生酒は、発酵・圧搾後に火入れ(加熱殺菌)をせず出荷されるお酒です。
通常の日本酒は搾った直後と出荷直前の2回に分けて火入れを行い、アルコール発酵を起こした酵母などを殺菌して安定させてあります。
しかし、この作業を行っていない生酒は生きた状態の酵母が残っており、温度が上がると酵母の活動によって味や香りが変わっていってしまうのです。
こうしたタイプのお酒は、常温の冷暗所よりも低温の冷蔵庫で保管する必要があります。
ただ、ドアポケットや野菜室などは開け閉めによる振動が大きく、それ以外の場所でも常に微細な振動の影響を受けてしまうことは避けられません。
吟醸系や生酒はあまり長く保管せず、数ヶ月以内にいただくようにしたほうがいいでしょう。
吟醸系のお酒について詳しく知りたい方はこちら
関連記事:吟醸酒と大吟醸酒
生酒について詳しく知りたい方はこちら
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新聞紙や専用の箱を使用して光をさえぎる
完全に光の当たらない保管場所がない場合は、瓶全体を新聞紙などで包んだり専用の箱に入れるなどして個別に光をさえぎりましょう。
本来は押入れやクローゼット、シンク下収納など、開閉の少ない冷暗所に置ければいいのですが、そうしたスペースに余裕のある部屋ばかりではありません。
また、一緒にしまわれている物によっては普通よりも頻繁に開閉があり、光の遮断が十分ではない可能性もあります。
しかし、一本ずつ新聞紙や箱で遮光してしまえば、こうした問題に悩まされる必要はありません。
新聞紙と箱を併用したり新聞紙を何重にも重ねて使用すれば、遮光していない普通の棚などで保管することも可能です。
ただ、この状態でも温度変化の影響は受けますので、直射日光や冷暖房の風が当たる場所は避けるようにしましょう。
寝かさず立てた状態で保管する
日本酒を長期間保管するときは、寝かさずに立てた状態にしておく必要があります。
瓶は(転がらない環境なら)立てた状態よりも寝かせたほうが安定するため、なんとなく横にして保管している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、コルク栓が一般的なワインの保管に慣れている方だと、むしろ寝かせておくほうが正解だと思っているケースも少なくないようです。
しかし、基本的に金属やプラスチックを使用した栓を採用している日本酒の場合、お酒が常に栓の内側に触れていると腐食や漏れの原因になってしまいます。
あえてワインのようなコルク栓を採用している銘柄以外は、安定した面に立てて保管しておきましょう。
あちこち移動させず一箇所に安置する
長期間保管する日本酒は、できるだけ動かさず同じ場所に置いておきましょう。
より理想的な環境で保管することにこだわりすぎると、季節ごと・気温ごとに保管場所を変えたくなるかもしれません。
しかし、移動させるたびに振動や光の影響を受けてしまうことを考えると、あまりこまめに保管場所を変えるのは得策ではないことがわかるはず。
一度安置したら飲むときまで動かさないくらいの覚悟で、最初に温度や湿度、振動の有無などをしっかりとチェックしておきましょう。
開栓後の日本酒の保存方法
開栓した日本酒は基本的に長期間の保管はできない
開栓前の日本酒は、適切な環境であれば数年、銘柄によっては十年以上保管しておくことが可能です。
しかし、一度開栓してしまった場合はそうはいきません。
栓を抜くと当然空気が瓶に流れ込みますが、日本酒に含まれる味や香りの成分は酸素と結びつく「酸化」によって急激に変化するため、おいしく飲める期間が一気に縮まります。
また、空気内に含まれている一部の菌類が繁殖し、お酒をダメにしてしまう可能性もあります。
特に残っているお酒が少ないときは、相対的に瓶内の空気の量が多くなりますので、 劣化の危険性も大きくなってしまうのです。
開栓した後の日本酒は冷蔵庫で保存する
開封前は常温で置いておけたお酒でも、開封後は冷蔵庫での保管が必要です。
日本酒の香り成分の一部は揮発性で、温度が高いほど早く空気中に抜けていってしまいます。
また、温度の変化や酸素との結びつきによる劣化も化学反応なので、温度が高いと進みやすくなります。
そのため、常温で放置するよりも温度を下げられる冷蔵庫での保管のほうが、開栓後もおいしさを保ちやすいのです。
ただ、家庭用冷蔵庫の温度(5~10度前後)で完全に劣化を防ぐことはできませんので、できれば数日、遅くとも一週間以内には飲みきったほうがいいでしょう。