日本酒以外の選択肢が増え、お酒を飲むという習慣を身につける場が家庭から仲間内へと変化したことで、日本酒の消費者から外れてしまった若年層ですが、近年、彼らに日本酒のおいしさを知ってもらうべく、様々な試みがなされています。
若者向けの商品開発
「ジュースのような」「ごくごく飲める」お酒で初期の飲酒体験を形成した人々にとって、アルコール度数が高く、独特の香りを持つ日本酒は、最初はどうしても「飲みにくいお酒」ととらえられてしまいがちです。
そこで近年は、低アルコールな日本酒や炭酸ガスを含有した日本酒など、飲みやすさに特化した商品が多数開発されています。
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それぞれ、通常通り造ったお酒を加水する際に単純に水を多くするか、もろみの発酵具合を調整してアルコール度数を低く抑えるか、火入れしたあとに人工的に炭酸ガスを含ませるか、滓を微量残し火入れ処理をしないことによって瓶内発酵させて炭酸を発生させるか、といった手法的な違いが、各商品の特徴を作り出しています。
研究が進んで味わいも洗練されるにつれ、最初は色物扱いされていたこれら新しいジャンルの商品も、次第に注目されるようになってきました。
また、日本酒で漬けた梅酒や、果物などの果汁を使用してジュースのような口当たりにしたものなど甘いお酒も、若い女性を中心にファンを増やしつつあります。
角度を変えた試みとしては、「0(ゼロ)杯から1杯へ」というコンセプトで、少量ボトルの商品やグラスを開発した福井県・黒龍酒蔵のような例もあります。
居酒屋などで、ビールやチュウハイをメインで飲んでいる層にとって日本酒の平均的価格である「一杯500円」以上という値段が選択肢の一つの壁と考え、大吟醸酒を一合ではなく150ml容量のおしゃれなデザインの瓶で発売した「黒龍 吟のとびら」。
一合ごとの提供が暗黙の了解になっていたため、「高い」「たくさんは飲めない」という印象だった日本酒ですが、日本酒居酒屋などお酒にこだわったお店にはせっかくたくさんの種類のお酒があるのだから、もっと手軽にいろんな種類を試してもらいたい、との思いから作られた、小さめのグラスに90mlと120mlの目印を入れた「黒龍 酒グラス」。
どちらも、以前とは変わってしまった日本酒に対するニーズを真摯に受け止め、その上で今は日本酒を飲まない人々に何とか最初の一歩を踏み出してもらおう、飲んでさえもらえばきっとおいしさをわかってもらえる、という熱い想いと自信が伺える商品といえるでしょう。