熟成と出荷時期での呼び名

袋吊り

 日本酒は、絞られたあと様々な工程を経て出荷され、消費者のもとへ届きます。この各工程のどの段階か、またどれだけ期間を置いたかによっても、呼び名が変わってきます。

もろみ
もろみ

 お酒を搾る前の段階です。現在の酒税法では、この段階のものを販売することは禁止されていますが、非常に味の濃い濁り酒のような状態です。

荒走り
荒走り

 もろみを袋やろ過装置などで搾りにかけたとき、一番最初に流れ出してきた部分のことです。ろ過していますが、を多く含み白っぽい色をしています。

なか取り
なか取り

 荒走りのあと、圧をかけなおすまでの間に搾られる部分。荒走りよりも澄んでいて、雑味の少ない部分です。

責め
責め

 上槽の終盤、機械や重しなどで強い圧力を加えて搾る部分。雑味がはいりやすいかわりに、力強い味わいにもなります。

雫取り
袋吊り

 もろみを入れた袋を吊り下げて自重だけで搾る「袋吊り」で搾られたお酒。

 袋取り、雫搾りと呼ぶ場合もあります。雑味が乗りづらく、繊細な味わいを表現したい大吟醸などで採用される方式です。

瓶囲い
瓶囲い

 搾ったお酒を、タンクなどではなく直接一斗瓶一升瓶などに詰めて貯蔵したお酒です。

 空気に触れる部分が小さく、温度管理もしやすいため、劣化を防ぎやすく高品質なまま出荷することが容易になります。

原酒
原酒

 日本酒は、搾った直後の時点のアルコール度数が18~20度くらいあります。通常はこれに加水し、アルコール度数が15度前後になるよう調整しますが、この加水をしないものを「原酒」と言います。

 原酒と言うと「搾った後なにも手を加えていない」という印象を受けがちですが、加水していないだけで、他の処理はしてあります。

無ろ過
無ろ過

 日本酒を搾った後、通常二度の滓引き・ろ過を施します。

 「滓引き」工程では、搾っただけでは取りきれなかった細かい滓を沈殿させて取り除き、「ろ過」工程では炭などを用いて雑味などを省いたり色を無色透明に近づけます。このろ過の過程を省いたものを無ろ過と呼びます。

 炭素ろ過を施していないので、日本酒本来のきれいな金色の水色が見られるのが特徴です。似た表現に、滓引きをしていない「滓がらみ」というものもあります。

生酒
生酒

 二度の火入れのうち、どちらか、もしくは両方を施していないものです。

 搾った直後の火入れをしていないものを生貯蔵、出荷直前の火入れをしていないものを生詰め、両方の火入れをしてないものを「本生」、もしくは専門用語では「生生」といいます。

 つまり、搾ったまま何も手を加えていないお酒を示す表現は「無ろ過生原酒」となります。

新酒
新酒

 その年に造られ、搾られたばかりのお酒。具体的には、7月1日から翌年6月30日までを1醸造年度(BY)とし、同じ醸造年度内に造られたお酒であることを示しています。

 例えば、12月ごろに仕込まれ、熟成を経て5月頃流通したお酒は「新酒」と言われますが、これが7月に入ると基本的には「新酒」の表記がはずされます(一部例外もあります)。

 アルコール五味それぞれの主張が強く感じられるものが多く、刺激的な味わいです。

古酒
古酒

 醸造年度をまたいで販売されているお酒。

 搾られてから数ヶ月しかたっていなくても、7月1日を過ぎていれば古酒なので、言葉から受ける印象と実態がかみ合わないこともあります。

 もちろん、数年から数十年の長期熟成酒も古酒とよばれます。角が取れ、丸みを帯びた旨みを感じられるようになります。

ひやおろし、あきあがり
あきあがり

 もともとは、夏の暑い盛りを過ぎた頃、気温が落ち着いたため出荷直前の火入れをせずに卸すことができたことからついた名称で、9月頃に販売を開始する「生詰め」もしくは「本生」のお酒を指します。

 性質上醸造年度をまたぎますが、例外的に「新酒」の表記で販売されることもあります。熟成によって角が取れ、火入れが少ない分繊細な味わいを感じることができます。

その他
酒

 凍らない程度の氷点下で貯蔵した「氷温貯蔵」、通常よりも長い期間熟成させる「長期熟成」、外界の影響を受けづらい雪室や洞窟内で寝かせる「雪中貯蔵」「洞窟貯蔵」など、日本酒の世界には様々な、知恵と工夫を凝らした貯蔵法・熟成法があります。

 地元の蔵元や好きな銘酒がどんな工程を経ているのか、ぜひ一度調べてみてください。