ま行
" ま "
古くから使用されている酒銘の一つ。 通常は「まさむね」と読むが、「せいしゅ」とも読むことができるため、日本酒業界一般で「清酒」をあらわす言葉として使用されてきた。
日本の伝統的な計量カップ。液状・粒状のものを計る際に使用されていた。 日本酒においては、一合枡、二合枡、一升枡などが、店頭での計り売りに使用された。 近年では、居酒屋などでお酒を提供する際に、「盛りこぼし」の受け皿として活用されている。
韓国原産の醸造酒。 米を麹と酵母を使って醸すので日本酒と似ているとされるが、実際には使用する原料を米に限定しない(サツマイモや小麦粉でも作られる)ことや麹菌が違うこと、三段仕込みではないのでアルコール度数が低い(5度前後)、人口甘味料などの添加物が使用されることなど、相違点が多い。 近年では日本にも輸入され、乳酸菌飲料のような甘酸っぱい口当たりとビールに近い低いアルコール度数による飲みやすさから、若者を中心に人気がでてきている。
" み "
麦や大豆などを麹で発酵させて作る調味料。 日本酒と同じ黄麹を使用する。
酒造好適米の一種。 1978年に長野県で作られた、比較的新しい品種。 寒冷な土地での栽培に適しており、長野県のほか、主に東北地方で栽培されている。 米粒は山田錦には及ばないものの大きめで、バランスの良い味わいの酒に仕上がりやすいとされる。
麹米ともち米を焼酎や醸造アルコールへ加えて造られる料理用酒。 原料を水とあわせる日本酒と違い、すでにアルコールを含む焼酎などを使用するため、アルコール発酵が抑えられ糖度が上がる。 醸造、熟成期間合わせて2年近くかかる三河みりんや三ヶ月ほどで完成する本格みりん、調味液を合成して作るためアルコールをほとんど含まないみりん風調味料などの種類がある。
" め "
西暦1868年から1926年の間の期間を指す。 日本酒の歴史においては、細菌学の導入により山廃もとや速醸もとが発明されたり、酵母の分離と協会酵母の認定・培養・頒布が行われたりと、近代科学に基づいた酒造技術の発展が目覚しかった時代といえる。 海外への公式な輸出が始まり、酒造総合研究所の前身である国立醸造試験場が設立され、第一回全国新酒鑑評会が開催されるなど、現在まで続く体制の原型が出来上がったのもこの時期。 酒株が廃止され一時は三万軒を越える蔵元が設立されるも、戦争などによる重税で短期間で半数近くまでその数を減らすなど、時代の移り変わりと同じように酒造業界も混迷した時代でもある。
特別に名前をつけたお酒。 「(名の知られた)良質なお酒」という意味で使用されることも多い。 江戸時代までは、「どこそこで造っているお酒」「○○(屋号)のお酒」で十分だったため、ひとつずつの商品にそれぞれ名前をつける必要性はあまりなく、そんな中で敢えて名前をつけるのは他のお酒と区別しなければならない特別なお酒だけだった。 「男山」など、特に全国的に有名になった銘はおいしい日本酒を表す代名詞としても使用されたため、一時は酒銘に男山を掲げる蔵が全国各地に20以上も存在することもあった。
酒に酔うこと。また、その症状。 語義的にはアルコール量の多少や症状の強弱は関係ないが、一般的には普通よりも深く酒によっている状態をあらわすことが多く、「泥酔」と同じように使用される。 異常行動を伴わない単純酩酊、精神的な興奮を伴い衝動的な行動の危険のある複雑酩酊、記憶の一時的喪失や理解できない言動を伴う病的酩酊に分類される。
" も "
「盛り切り」から転じた。居酒屋などで、お酒を瓶や樽ではなくコップや枡などで一杯ずつ提供する販売方法。 最近では、受け皿にこぼすように注ぐ「盛りこぼし」とセットになって認識されているケースも多い。
麹米と掛け米の両方に、精米した米を使用した日本酒の古い呼び名。平安時代に、奈良で造られていた僧坊酒が起源とされている。
料理などに香味やアクセントを加える野菜や香草類、調味料。 少量で味覚や嗅覚に刺激を与えられるため、日本酒の肴に欠かせない要素のひとつであると言える。 代表的なもので、ねぎ、しょうが、みょうが、きゅうり、紫蘇、ごま、わさび、からしなど。
失敗や不安、苛立ちなどから酒を呑むこと。 自暴自棄になり、後のことを考えない飲酒。 呑みたい、という欲求からの飲酒ではないため、嗜好や自身の飲酒限界は考慮されず、結果として泥酔しやすい呑み方といえる。 科学的にも、アルコールが感情の起伏を激しくし、かつ呑み始める直前にあった記憶の定着を促すため、「嫌なことを忘れる」という目的でのやけ酒はあまり意味がない。 ただ飲酒量が適量なら、楽しく飲んで気持ちを切り替える、ストレスを発散する、といった効果は期待できる。
人工培養などをされていない、自然に存在する状態の酵母菌。 明治時代まで全ての日本酒は野生酵母を取り込みその働きを助ける生もと造りで醸されていたが、純粋培養された酵母を使用した酒母づくりが発明されると、腐造の危険が大きく手間も時間もかかる生もとは廃れ、現在では野生酵母を呼び込む方式の酒造りはほとんど見られなくなった。 長く酒造りを続けた蔵に優勢種として住み着いている「蔵付酵母」や、自然の花の中から採取される「花酵母」などがある。
薮田産業株式会社の、薮田式もろみ自動圧搾装置のこと。全国に7割以上のシェアを持つため、自動もろみ搾機そのものを指して「ヤブタ式」と言うこともある。
酒造好適米の一種。 通称、「酒米の王様」。 米粒が大きく心白割合が著しく高い、高精白でも砕けづらいなど酒米に適した特徴を持つが、収獲直前には130cmほどに成長するため倒れやすく、病気などにも弱いなど、栽培が難しい品種でもある。 1923年に兵庫県明石市で作られ、現在では新潟を北限として全国で栽培されている。 特に兵庫県の一部は特A地区、A地区に指定されており、ここで栽培されたものは他の地域産のものに比べて良質であるということで、酒米の中でも高値で取引されている。
- 山廃もと
生もと造りの工程のうち、「山卸し」とそれに付随する作業を廃した手法。 体力と技術を要する「山卸し」を行わなくてすむため、生もと造りの中でも比較的容易で、かつ速醸もとよりもしっかりとした酒質になる。
終戦直後、闇市で出回った危険な密造酒。 工業用アルコールに呑むと失明したり最悪死に至るメチルアルコールを加えたものや、味をごまかすために大量の添加物が加えられたものなど、品質以前に即座に健康被害が出るものも少なくなかった。 これらを市場から駆逐するために、少ない原料から大量の(すくなくとも害のない)清酒が造れる三倍増醸酒の製造が開始された。
お酒を呑んでいる途中に、あいまあいまで飲む水。 急激な酔いを防止し、ほろ酔いが長く続くようになる。脱水症状、二日酔いの予防としても効果的。 つまみなしで呑んでいるときには、舌がリセットされるため、お酒の味をより感じやすくなる効果もある。
" よ "
通常の三段仕込みにもう一段加えた仕込み方法。 通常、四段目には甘酒やもち米を投入し、甘みや旨みを強化する。
ら行
" ら "
話術を用いる伝統芸能のひとつ。 笑い話や人情話などを、身振り手振りなどを加えながら面白おかしく話して聞かせる。 古典と呼ばれる古い演目は江戸時代に成立したものが多く、日本酒が登場するものも多い。
カリブ諸島を原産とする蒸留酒。 サトウキビの廃蜜糖を原料とする醸造酒を蒸留して造られる。 海賊船や海軍の船で飲まれることが多く、「海の男の酒」とのイメージが強い。 日本にも黒糖焼酎や甲類焼酎など、サトウキビや砂糖そのものを原料とするお酒はあるが、麹の種類や具体的な製法で相違がある。
" ろ "
搾ったあとの清酒を、活性炭などを用いたろ過装置に通すこと。 細かなもろみの破片などを取り除くほか、雑味や余分な色をはぶいて透明度を高める目的で行われる。 この工程を省いたものを「無ろ過」と呼ぶ。
わ行
" わ "
主にブドウの果汁を発酵させて造る醸造酒。ブドウ酒ともいう。 現在、ビールと並んで世界各国で飲まれている醸造酒であり、アルコール度数や食中酒という性質上日本酒が海外進出を果たす上での競合でもある。
日本酒の蔵に昔から伝わる箴言。 「わじょうりょうしゅ」と読み、皆の和が良い酒を醸す、というチームワークを重視する言葉。 どんな酒にするかという方向性や、仕込み期間中続く重労働、麹や酒母・もろみの管理は、どれだけ腕の良い杜氏であってもとても一人では行えず、蔵人全員のこころをひとつにしてはじめて良い酒を造ることができるといわれている。
もろみを搾ってできる原酒に、アルコール度数や香味の調整のために水を加えること。または、加える水そのもの。 原酒の状態では20度前後ある日本酒は、割り水によって15度前後に調整されて出荷される。
酔いの症状が悪い方向に現れること。 気分の抑鬱、泣く、怒るなど負の感情の過度な発露、お酒を呑んでいる最中や次の日の強い不快感などを指す。 「質の良い酒は悪酔いしない」ともいうが、多少の差はあれ結局アルコールの分解能力によるため、呑み過ぎてしまえば同じである。