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カテゴリーは「常温」「冷やす」「温める」の3つ
日本酒の温度による呼び名は、細かく分けると10種類存在します。
温度による日本酒の呼び名の変化 | ||
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呼び名 | 温度 | 特徴や注意点など |
飛切燗 (とびきりかん) |
55℃前後 | かなりバランスがよい酒でも味の輪郭が崩れ、香りもアルコールもきつくなりすぎる。ヒレ酒、骨酒など、季節の風物詩的に楽しむ飲み方に適している。 |
熱燗 (あつかん) |
50℃前後 | |
上燗 (じょうかん) |
45℃前後 | 温度が上がるほどに酸味を感じづらく、甘みを感じやすくなる。アルコールや香りの揮発は温かいほど強くなる。 |
ぬる燗 | 40℃前後 | |
人肌燗 (ひとはだかん) |
35℃前後 | |
日向燗 (ひなたかん) |
30℃前後 | |
冷や | 20〜25℃前後 | 甘辛度や酸度によって適温が変わる。温度が上がると感じる香りも変わってくる。吟醸酒、大吟醸酒、純米酒などが適している。 |
涼冷え (すずひえ) |
15℃前後 | |
花冷え (はなひえ) |
10℃前後 | 冷たさを感じるレベル。生酒や原酒、吟醸酒などが適している。冷やし過ぎると香りがたたないので注意。 |
雪冷え (ゆきひえ) |
5℃前後 |
ただ、ここまでしっかりと呼び分ける人はあまりおらず、一般的には常温の「冷や」、冷やした「冷酒(れいしゅ)」、温めた「燗(かん)」の3つのカテゴリーでざっくりと分類しています。
日本酒らしいおいしさを楽しめる「冷や」(20~25度)
温めても冷やしてもいない常温の日本酒を「冷や(ひや)」「冷や酒(ひやざけ)」と呼びます。
「冷」という字が入っていて紛らわしいのですが、冷蔵庫などで温度を下げた「冷酒(れいしゅ)」とは別のカテゴリーです。
(日本酒が一般的に飲まれるようになった頃は、冷蔵庫のような気軽に冷やせる装置はなく、温めたお酒か温めていない(相対的に冷たい)ままか、の2択だったため)
具体的な温度帯としては20~25度前後。「常温」とはいっても、四季によって気温が大きく異なる地域では多少の温度調整や保管場所の選定が必要です。
冷たい飲み物と思って飲むとギャップを感じてしまうかもしれませんが、甘味・旨味・酸味・苦味など日本酒らしい味わいを楽しめる温度帯だと言えます。
ちなみに、人間の味覚は温度が上がると甘味・旨味を感じやすく、下がると酸味を感じやすくなるため、まずは冷やで飲んでみてから温度を調整すると好みに近づけやすくなります。
冷やの状態で甘ったるかったり強すぎるように感じたら温度を下げ、もっと旨味やコクが欲しいと思ったら温度を上げる方向に調整してやれば良いのです。
すっきり飲みやすい「冷酒」(5~15度)
冷蔵庫などを使用して温度を下げた日本酒を「冷酒(れいしゅ)」と言います。
冷酒に分類される温度帯は5~15度前後で、さらに細かく3つに分けられます。
涼冷え(15度前後)
冷や(常温)より少しだけ温度を下げた状態です。
日本酒はわずかな温度変化でも味や香り、口当たりが大きく変化することがあります。
冷やの状態だとちょっと味や香りが強すぎるという場合、涼冷えまで下げてやるだけで十分バランスが改善するということも少なくありません。
ただ、冷蔵庫だと冷え過ぎてしまうことも多いため、時間を区切ったり流水を使用するなど工夫が必要かもしれません。
花冷え(10度前後)
口に含んだ際に冷たさを感じるレベルの温度です。
家庭用冷蔵庫でしっかりと冷やしたもの、お店で「冷酒」を頼んだ場合に提供されるものは、おおむねこのカテゴリーだと思ってよいでしょう。
酸味が際立ち、雑味を感じにくいクリアな味わいになります。
華やかな香りやフルーツを思わせる甘味が特徴の純米吟醸・純米大吟醸などにおすすめの温度帯ですが、銘柄によっては味わいが抑制されすぎてしまう恐れもあります。
雪冷え(5度前後)
氷水や冷凍庫なども使用して冷やした場合の温度です。
刺激的な冷たさを楽しめますが、味や香りのバランスが崩れてしまうため、良質なお酒には不向きな温度帯といえます。
冷凍庫で冷やす際に長時間放置してしまうと、一部が凍って味や香りが変質したりビンが破損する恐れがあるため注意が必要です。
人間の味覚は一般的に、温度が下がるほど酸味をはっきり感じ、甘味や旨味を感じにくくなります。
また、揮発性の香り成分は低温では発散が抑制され、酒器に口を近づけても強くは感じなくなっていきます。
きりっとした酸味やすっきりした口当たりを楽しみたいとき、香りや甘味の強い吟醸酒・大吟醸酒タイプのお酒を飲むときには、冷や以上の温度帯よりも冷酒がおすすめです。
ちなみに、外気温や環境に関係なく温度を下げられるようになったのは、冷蔵庫が飲食店や一般家庭に普及したあとのことで、日本酒の歴史の中でもごく最近だと言えます。
夏にきりっと冷やした吟醸酒や生酒で喉を潤す、というような楽しみ方をできるのは、現代に生きる日本酒好きの特権なのです。
甘味・旨味・アルコールを感じやすい「燗」(30~55度)
日本酒を温めることを「燗(かん)をつける」といい、温めた酒そのものを「燗」「燗酒」と呼びます。
燗に分類される温度帯は30~55度前後で、さらに細かく6つに分けられます。
日向燗(30度前後)
常温よりも少しだけ温めたものです。
ほんのりぬるいくらいの温度でひっかかりが少なく、夏でも冬でも飲みやすい温度だといえます。
常温より少しだけ甘味・旨味を強くしたいときにおすすめです。
人肌燗(35度前後)
人間の体温と同じくらいまで温めたものです。
口に含んでも温度を感じることはほとんどなく、お酒を飲んでいるとは思えない不思議に官能的なおいしさを楽しめます。
ただ、酸味が強いタイプのお酒だとこのくらいの温度帯からややだれた感じになってくるので、味や香りの相性は考える必要があります。
ぬる燗(40度前後)
人の体温より少しだけ上の温度です。
熱いというほどではないもののほんのりとした熱を感じ、その名の通り「ぬるい」温かさを楽しめます。
甘味や旨味が強くなり口当たりにもとろみが出てきますが、香りの発散はさほど強くならないため銘柄によっては吟醸酒などでもおいしく飲める可能性がある温度帯です。
上燗(45度前後)
バランスよく飲める中ではもっとも高めの温度です。
甘味や旨味が強くなり、酒器に口をつけると通常よりもはっきりとアルコールを感じます。
一般的に「燗でおいしくなる」と言われるお酒は、これくらいの温度帯で一番バランスが取れるものを指していることが多いようです。
熱燗(50度前後)
口に含むとはっきりと「熱い」と感じ始める温度です。
アルコールや熱の刺激が強くなるため人気のある温度帯ですが、味わいのバランスが取りづらく香りもきつくなることから良質なお酒の楽しみ方としてはあまり推奨できません。
それでも真冬、もしくは寒い季節の屋外など、「高い温度を持った飲み物」自体を楽しみたいときには適したカテゴリーだと言えるでしょう。
飛び切り燗(55度前後)
一般的にはあまり推奨されないほどの高温です。
味や香りのバランスはかなり崩れ、酒器を口に近づけると発散したアルコールが鼻を刺激します。
そのままではなく、炙った魚のヒレや骨から旨味を移して楽しむ「ヒレ酒」「骨酒」や、あえてアルコールを飛ばし気味にする「玉子酒」など、アレンジメニュー向きの温度です。
人間の味覚は、温度が上がるほど甘味や旨味を感じやすく、酸味を感じにくくなっていきます。
また、アルコールや香り成分の一部など揮発しやすい成分は、温度が上がるほど発散しやすくなり、酒器に口を近づけたときにしっかり感じられるようになります。
酸味や香りよりも甘味・旨味を中心としたコクを特徴とする本醸造酒や純米酒などは、基本的に燗に向いている酒だと言えるでしょう。