おいしいお酒をさらに引き立ててくれる、肴。
日本酒が料理を引き立てるように、しっかり選んだ肴はお酒の魅力を何倍にも膨らませてくれます。
ただし、酒質によっては相性の悪いものもあり、お互いの長所を打ち消しあう結果になってしまう恐れもあります。
そこで、ここではお酒の酒類ごとの食べ物との相性を考えて見ましょう。
分類ごとの特徴と相性の良い食べ物
日本酒は、香りと味の強弱で、「爽酒」「薫酒」「醇酒」「熟酒」の四つに分類されます。
「爽酒」
・香りも味も控えめなタイプの「爽酒」は、ほのかな香りとフレッシュな酸味や甘みが特徴です。
どちらかというと、食べ物を引き立てる力を持っていて、特にさっぱりとした料理や風味をしっかり楽しみたい料理などと相性が良いお酒といえます。
酸味や甘みのバランスによっては、さくらんぼなどの果物に合う物もあります。
ただし、ビールのような強い炭酸やワインのようなタンニンを持たない日本酒は、基本的に強い脂との相性が悪く、全体に繊細な爽酒とは、特に避けたい組み合わせと言えるでしょう。
「薫酒」
・華やかな香りとあっさりとした味わいの「薫酒」は、なんといってもフルーツや花の香りのような爽やかな香りを楽しみたいお酒です。
口に近づけたときの上立ち香から飲み込んだ後の返り香まで、良い香りを邪魔しない素朴な料理と合わせましょう。
そのなかでも、香りは強くない代わりに旨みがしっかりと口中に残る、淡白な魚介類や味の濃い野菜などは、お互いの苦手分野をフォローしあってくれるため相性は抜群です。
逆に、飲み込んだ後も香りが残ってしまうような食べ物、特にお肉類は苦手とする相手と言えるかもしれません。
「醇酒」
・お米由来のしっかりとしたコクが楽しめる「醇酒」は、バランスの良い旨みが特徴の「日本酒らしい日本酒」と言えるでしょう。
そのため、基本的にご飯にあうような料理であれば、大体合わせられる可能性が高いタイプです。
料理を一口、しっかり楽しんだ後含むお酒がその余韻を洗い流し、お酒のコクがゆったりと消えていくころには次の一口が欲しくなる、そんな正のスパイラルを楽しめるはずです。
燗映えする銘柄であれば、脂っぽい料理との相性もアップするため、フォロー範囲はさらに広がります。
ただ、果物のような酸味やお菓子のような甘みなど、ご飯との相性が良くない物は避けたほうが無難かもしれません。
「熟酒」
・味も香りも強く、日本酒というより蒸留酒に近いイメージの「熟酒」は、その名の通り熟成期間を経たお酒に多いタイプです。
複雑な香りやとろりとした味わいを楽しむには、焼酎やウイスキーの肴のようにこってりとしたものが合うはずです。
本来苦手なはずの脂や甘みも、熟酒なら負けることなく戦ってくれるでしょう。
むしろ、繊細な味わいの料理だと、お酒の強い個性に飲み込まれて楽しめなくなってしまう可能性があります。
お酒に合う肴を買う(初級編)
呑もうと思っているお酒がどんなタイプのものか把握して、それにはどんな種類の肴が合うかわかったら、早速調達しに行きましょう。
ただ、特別な日でもない日常の晩酌の場合、手間隙をかけたりこだわったりするのは面倒くさく感じることも多いと思います。
まずは、「すぐ飲みたい!」という気分のときに、ぱっと買ってこられてすぐ食べられる肴のご紹介です。
1、乾物
するめ、炒り豆、あられなどのほか、煮干やスナック、お酒の種類によってはドライフルーツなどもいいかもしれません。
そのままテーブルに置き、ばりっと袋を開いたらもう食べられる手軽さがありがたいですね。
ある意味気軽な晩酌のひとつの完成形とも言える、独特の情緒もあります。
欠点としては、やはりどうしてもおじさんくさくなってしまうところでしょうか。
2、缶詰
最近では、昔ながらの魚の蒲焼や味噌煮といったものだけではなく、焼き鳥などの肉類やカレーなどいろいろな味のついたもの、さらには料理ではなく酒の肴にすることを前提として作られている燻製などの缶詰も出ているようです。
温かいのがよければ、缶のふたをあけて魚焼きグリルやストーブなどで缶ごと温めるという方法も取れます。
缶のフチで手を切ったり、熱くなった缶でやけどしないようにご注意を。
3、冷凍食品
お皿にうつしてレンジでチン、のひと手間が煩わしくないなら、かなり上等な食事兼おつまみになってくれるはずです。
ラインナップ的に、どうしても揚げ物などが多くなってしまうのが欠点ではありますが。
4、お惣菜
品揃えが充実しているお店なら、煮物や酢の物、焼き魚、塩茹でにしてある枝豆なんかもあるかもしれません。
また、もう切って盛り合わせてあるお刺身やお寿司など、日本酒向けの肴も十分期待できます。
時期によってはコンビにでも、おでんや焼き鳥を扱っていますので、夜遅い晩酌にも対応可能です。
ここにあげたものは(特に上のほうであればあるほど)、お酒との相性や体のことを考えると、本当はあんまりお勧めするべきではないものたちかもしれません。
スナックや缶詰はどうしても脂っぽくなりがちですし、出来合いの冷食やお惣菜にお酒とお互いに高めあうような力は求めるべくもありません。
それでも、気軽にお酒を楽しむ、疲れた体にまずは一杯お酒をしみこませる、という飲み方の相棒としては、十分な活躍を期待できるでしょう。
さて、それではそういう気軽さ重視ではなく、もっときちんとお酒を楽しみたいとき、それも料理をするのではなく(例えば料理ができない時)、購入することで対応したい場合には、どんなものが考えられるでしょうか。
次の記事では、ちょっと特別な肴について考えて見ましょう。