甘口の日本酒は柔らかい口当たりと飲みやすさが魅力
甘口の日本酒とは、糖分の多さや味・香りのバランスなどから、飲んだときにしっかりとした甘味を感じるお酒のことです。
日本酒は発酵過程で麹菌の働きによってお米のでんぷんを糖に、酵母菌の働きによって糖をアルコールに変換しています。
このアルコールへの変換によって糖が消費される割合が低いほど、最終的にお酒の中に残る糖分の量が増えて甘口になりやすくなります。
ただ、日本酒の味わいは糖だけではなく他の味わい成分、特に酸味とのバランスによって大きく感じ方が変わります。
糖が十分残っているお酒でも、酸がそれ以上に際立っていると甘味が相殺されてしまい、全体としては辛口に感じる、というケースも少なくありません。
また、アルコール感が弱くフルーティな香りを持つお酒だと、糖分の量が少なくてもまるでジュースのように甘く感じられるものもあります。
甘口の日本酒は「お酒臭さ」「アルコールっぽさ」がないものが多く、日本酒をあまり飲まない方でも楽しみやすいお酒です。
食事と一緒に飲むというより簡単なつまみと一緒にお酒単体で楽しむ、もしくはデザート代わりの食後酒にするのに適しています。
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初心者におすすめのおいしい甘口銘柄5選
鼎(かなえ) 夏生 純米吟醸 おりがらみ
甘口の中でも、特に果物のようなジューシーでフレッシュな甘さを求める人におすすめの銘柄です。
季節ごとに数種類の銘柄を出している鼎シリーズですが、この「夏生 純米吟醸 おりがらみ」は暑い季節にさっぱりと飲めるキレのある甘口になっています。
一般的に日本酒の甘さを示す「日本酒度」(低いほど甘口に感じやすくなる)はさほど低くない-3程度。日本酒度については、下記の表をご覧ください。
大辛口 | 辛口 | やや辛口 | 普通 | やや甘口 | 甘口 | 大甘口 |
---|---|---|---|---|---|---|
+6以上 | +5.9 〜 +3.5 | +3.4 〜 +1.5 | +1.4 〜 -1.4 | -1.5 〜 -3.4 | -3.5 〜 -5.9 | -6以下 |
しかし、驚くほどフルーティな香りと、日本一といわれるほどの超軟水を仕込み水としていることによる口当たりの柔らかさから、数値以上に甘さを感じられます。
お酒の中に残る細かな浮遊物である滓(おり)をあえて残したおりがらみなので、ごく微かな炭酸をまとったシルキーな口当たりです。
メロンやリンゴのような甘さとしっかり効いた酸味によるキレの良さ、後味に微かに感じる渋味からはグレープフルーツのような印象も。
フルーティな甘口の日本酒の中からどれか一本だけ試すのであれば、間違いなく有力候補になる銘柄といえるでしょう。
ちなみに、お酒単体でもおいしく呑めるのですが、印象の近い果物を肴にするとまた一段と深い味わいを楽しめますよ。
神亀(しんかめ) 純米酒 甘口
ただ甘いだけじゃなくて日本酒らしさも欲しい、という方にはぜひ試していただきたい骨太の甘口銘柄です。
神亀酒造は知る人ぞ知る純米酒の老舗で、全国から純米酒について学ぶべく杜氏や蔵人が修行にやってくるほどの実績を誇っています。
生み出すお酒はまさに「ザ・日本酒」というべきもので、どっしりとした米の旨味とそれを支える酸味が安定感のあるバランスを感じさせます。
この甘口純米についても同様で、お米を良く噛んだときのような自然な甘さを持ちつつも、存在感のある酸味や苦味が印象を引き締め、全体的に重厚感のある味わいになっています。
その妥協のない飲み応えは、「柔らかく優しい甘口」を期待して飲むとイメージとの違いにとまどってしまう程。
そのため、誰にでもおすすめできるわけではありませんが、甘口はインパクトが無い、というイメージを持っていらっしゃる方にはぜひ一度チャレンジしていただきたい銘柄です。
このお酒に慣れてくると、逆に他の甘口では物足りなくなってしまうかもしれませんよ。
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酔仙酒造 活性原酒 雪っこ
にごり酒特有のとろりとした甘味を存分に味わえるお酒です。
にごり酒は、もろみを搾るときに目の粗いメッシュを使用したり、一度普通に搾ったお酒に酒粕の一部を戻したりして造る日本酒。
含まれているもろみ(粕)の量によってにごり方に差が出るのですが、雪っこは全国的に見ても濁りがかなり強い方に分類される銘柄で、一見すると甘酒のようにも見えます。
実際に日本酒度-13というなかなかの甘口なのですが、もろみがアルコールの刺激を和らげることで、甘口の印象をさらに強めてくれています。
加水していない原酒なので、甘味はもちろんそれ以外の味わいも濃厚で、とろりとした口当たりもあってまるでネクターのよう。
しかし、しっかりとした酸のおかげで甘ったるくは感じず、するすると飲めてしまいます。
それでも濃すぎると感じる場合は、炭酸や牛乳で割ったり大きめの氷にそそいでロックで飲んだりしても十分楽しめます。
特に牛乳割りは、酸味や甘味と相まってヨーグルトリキュールのような味わいになり、日本酒に苦手意識がある方でもおいしく飲むことができます。
ただし、もともとのアルコール度数が20度もあるお酒なので、そのままはもちろん割ったとしてもアルコール度数のかなり強い飲み物になります。
口当たりがいいからといって油断していると泥酔してしまう危険性もあるので、飲みすぎにはいつも以上に注意した方がいいでしょう。
松竹梅 白壁蔵 澪 -MIO- みお
まるで炭酸ジュースのようなさわやかな甘味を楽しめる、スパークリング日本酒の有名銘柄です。
近年では全国で多数のスパークリング日本酒が造られるようになってきていますが、澪はその中でも特に「日本酒っぽさ」を極力排除した風味が特徴。
甘酸っぱい味わいはサイダーやスパークリングワインのようですし、香りはマスカットを思わせるさわやかなもので日本酒臭さはほとんど感じられません。
泡立ちも上品で、日本酒の酒器よりもワイングラスに注いで楽しむのに適しています。
また、炭酸の刺激や酸味は甘さの感じ方を和らげ、すっきりと楽しめるという効果もあります。
実際、澪は日本酒度-70という超甘口ですが、飲んでみるとそこまで甘いと感じることなくおいしく飲むことができます。
甘酸っぱくていい香りのするジュースのような飲み口の澪は、日本酒っぽい風味やきつい口当たりのお酒が苦手な方にもおすすめしやすい銘柄といえます。
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出羽桜 貴醸酒(きじょうしゅ) SWeeeeeT(スウィート)
はちみつやシロップのようなとても強い甘味を楽しめるお酒です。
貴醸酒とは、仕込み水の一部を日本酒に変えて造られるお酒のこと。
そうすることで、発酵中のもろみのアルコール度数が急上昇して酵母の活動が弱まり、分解されずに残る糖分が多い濃厚な日本酒になるのです。
「SWeeeeeT(スウィート)」の日本酒度は-65。
一般的な甘口のお酒の日本酒度が-5~-10程度であることを考えると、この銘柄がいかに強烈な甘さを持っているかがわかるでしょう。
ただ、特別な酵母を採用することで、単に甘いだけではなく、強くさわやかな酸味ももたせてあるため、甘さとは裏腹な飲みやすさも兼ね備えています。
ストレートでちびちびと楽しむのももちろんですが、ロックや水割り、ソーダ割りなど、蒸留酒のようにいろいろな飲み方に対応できるのも魅力のひとつ。
アイスクリームやパンケーキにシロップ代わりにかけてみたり、加熱してアルコールを飛ばしてから甘さ控えめのフルーツに絡めるなど、スイーツと合わせてもおいしいですよ。