海外で飲まれる日本酒

地球儀

健康的な「和食」に対する関心の高まりや、世界的に見ても類まれなその味わいから、現在海外で日本酒の販売量が伸びています。

蔵元も、国内での消費量の減少や少子高齢化によるマーケットの縮小を見越して、積極的に外国での販路を模索しているようです。

外国での販路

政府も近年は、工業製品以外の輸出品として日本文化を能動的に発信する、いわゆる「クールジャパン」政策を推進しており、例えば国税庁ではこれからお酒を輸出したい蔵元に向けて、日本酒輸出ハンドブック(輸出先の国のデータや呑まれているお酒の傾向、商習慣の違いなどの注意点、販路の開拓フローチャートなどがまとめてある)を主要な国別にまとめるなど、サポート体制を整えています。

しかし、海外で日本酒を販売しようという試みは、なにも最近始まったことではないのです。


・輸出開始は明治時代


明治時代

過去の文献を見ると、江戸時代にはすでにオランダとの朱印船貿易によって日本酒を輸出していたようですが、公式な最初のヨーロッパ進出は1872年、オーストリア万国博覧会への出展ということになっています。

その後、世界大戦の前後には一旦輸出が途切れますが、終戦後に酒造量が回復するのを待って再開。

戦争で大きな被害のなかった大手の蔵では、終戦からわずか5~6年で輸出に復帰したところもあったそうです。

終戦


とはいえ、輸送環境や冷蔵管理などがまだまだ不十分だった時代、海外で日本と同じ品質のお酒を呑むのはなかなか難しいケースも多く、文化の違いや知識がないことから、誤解を受けることもありました。

昔、ある日本人が出張の際、友人になったアメリカ人に日本酒を勧めたところ、「ありがとう、でも、僕は防腐剤の入った食品は避けることにしているんだ」と言われたそうです。

アメリカ人

驚いてよく聞いてみると、日本酒はアルコール度数蒸留酒に比べて低く、また環境によってはすぐに悪くなってしまうらしい(おそらく、醸造中に雑菌の入る腐造のことをさしている)ため、輸出されてくるものには全て防腐剤が添加されていると思われていたとのこと。

もちろん実際には、温度変化や日光によって劣化してしまうことはあってもお酒が腐ることはありませんし、そもそも法律では「清酒」に防腐剤を添加することは(たとえ海外で販売するものでも)認められていません。

他にも、呑んでみたけどおいしくはなかった、と言われて銘柄を確認しようと容器を見せてもらったところ、「For Cooking(料理酒)」と書いてあった、という話などもあり、海外での普及は一筋縄ではいかなかったようです。


それでも、本当の美味しさを海外の人々にも知ってもらいたいという各蔵元の熱意と数十年にも及ぶ努力によって、今では数十の国や地域に日本酒が輸出されるようになりました。

現在、最大の輸出相手国はアメリカで、全輸出量の実に1/3以上を占めています。

アメリカ

香港、韓国、台湾、中国と近隣諸国が上位に入り、以降、シンガポール、カナダ、イギリス、オーストラリア、タイなどが並ぶランキングからは、多彩な食文化の中でも、日本酒が受け入れられている様子を読み取ることができます。

輸出総額は105.2億円。

ほとんどの国で、前年比110%以上という伸びを記録しているところからも、日本酒ブームの広がりがわかります。

(数字は全て2013年度)

日本酒ブーム


・海外で行われる日本酒コンテスト


メダル

日本酒に対する関心の高まりに合わせて、国内で行われている全国新酒鑑評会のようなお酒のコンテストが海外でも開かれるようになってきました。

代表的なものをいくつかご紹介します。



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IWCSAKE部門


ロンドン

30年以上の歴史を誇る、世界一権威のあるワインコンテストの日本酒部門です。

毎年4月にロンドンで開催され、SAKE部門は2007年から行われるようになりました。

2014年には261蔵725銘柄が参加しており、海外マーケットにおける評価指針として蔵元も注目していることがわかります。

7つのカテゴリーに分けて評価し、優秀なものはゴールドメダル、シルバーメダルなどのトロフィーを獲得。

そして、全部門を通してもっとも優秀な一銘柄に「チャンピオン・サケ」の称号が与えられます。



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・ロンドン酒チャレンジ


ハロッズ

2012年から開催されている、酒ソムリエ協会主催の酒コンテストです。

ロンドンのデパート、ハロッズのテイスティングルームで行われます。

15を超える国から集まったソムリエたちが、ブラインドでのテイスティングはもちろん、包装なども合わせて総合的に評価。

受賞酒にはそれぞれ、金、銀、銅賞のステッカーが与えられます。



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・全米日本酒歓評会(U.S. National Sake Appraisal)


ハワイ

2001年から開催されている、ハワイで行われるコンテスト。

全国新酒鑑評会と同じ審査方法を取っており、日本とアメリカの10人の審査員が評価を行います。

高評価の酒には金賞、銀賞が与えられ、金賞の中からグランプリと準グランプリを選出します。

また全ての出品酒は、歓評会終了後にホノルル、ラスベガス、東京で開かれる一般公開の利き酒のイベント、「ジョイ・オブ・サケ」にも提供されることになっているようです。

利き酒のイベント



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