" さ "
中心がわずかにくぼんだ円盤状で、裏側に小さな高台(円筒状の脚)がついた器。 古来より神事などでお酒を使う際に用いられており、現在でもお正月の屠蘇や結婚式の三々九度など行事のなかで使用される。
日本酒に関するマナー違反の一つ。 左手で徳利を持って、右手のひらが上を向いてしまう形で右側の人にお酌をすること。 右側の人にお酌をする場合は、からだごと90度回転して相手のほうを向いてからする。
酒蔵の入り口に、新酒ができたことを知らせる為につるされる杉の葉の玉。 直径50cmから1m以上になるものもあり、中心に芯として入れた網状の玉に葉のついた杉の枝をぎゅうぎゅうと押し込んでから、外側を球状に刈り込んで造る。 つるされたときには緑色だが、時間の経過とともに茶色く枯れていき、ちょうど熟成が終わる頃に枯れ切ることから、新酒の熟成具合を計る目安として親しまれる。
かつて朝廷内に存在していた、酒造りを行う部署。飛鳥時代にはすでにあったことが文献で確認されている。
もともとは「酒菜」と書き、お酒を呑むときに食べる副菜(おかず)を指す。 合わせる日本酒のタイプにもよるが、一般に塩分の多めな、味や香りの強いものが選ばれる。 逆に、油分や灰汁の強いものは、日本酒の味わいを損なったりうまくマッチしないため、避けられる傾向がある。これは、日本酒がビールやワインなどと違い、タンニンや炭酸などを含まないためである。 お酒をおいしく呑める要素全体を指すこともあり、好きな音楽やきれいな景色、楽しい思い出、よいニュースなどで気分を盛り上げつつ飲酒することを「~を肴に呑む」と表現することも多い。
→酒造好適米
酒を提供する店。 蔵元として酒を造る「造り酒屋」、商品として販売する「売り酒屋(酒販店)」、その場で飲める形で提供する「居酒屋」があるが、それぞれが組み合わさった複合的な形態も多い。
もろみから清酒を分離した搾りかす。 アルコールも残っており、料理や漬け物作りなどに利用される。
アルコール飲料、ここでは日本酒を醸造すること。 基本的な方法は共通しているがわずかな違いで味わいも質も大きく変化し、日本全国で原材料の選び方から技術、信念にいたるまで多種多様な酒造りが行われている。 日本では販売のみならず製造自体にも免許が必要であり、個人で勝手に酒造りを行うと罰せられる。
槽型のもろみ搾り機の事。圧力をかける部分が、昔ながらの完全人力使用のものと、機械制御のものがあるが、もろみを並べるのはどちらも人の手で行う。
神前結婚式で行われる固めの儀式の一つ。 「盃を共にする」ことから「食事を共有する=家族になる」ということを表す儀式で、女性が三度、次に男性が三度、最後にもう一度女性が三度の合計九度お酒を呑む。 もともと古代中国から伝わった陰陽道に基づいた儀式とされ、陽の数字である奇数が用いられている。
酒母に麹と掛け米を加える際、一度に全て入れるのでなく、三回に分けて入れる手法。 こうすることで酵母菌が発酵の最初から最後まで活性を失わず、高いアルコール度数を獲得することができる。
そのお酒が、どれだけ酸性かを示す指標。 値が大きいほど酸性であることを示している。
もろみに、本来搾れるお酒の2倍の添加物を加えて搾ることで、生産量を3倍に増やしたお酒。三増酒とも呼ばれる。 戦後の闇酒による被害をなくすため苦肉の策で造られたもので、味は悪く、その後日本酒の負のイメージの元ともなった。
" し "
一年を通じて酒造りを行うこと。 かつては夏場などの気温の高い時期は、発酵のコントロールや腐造の防止が困難で酒造りには向かなかったが、近年では空調設備や冷却装置、衛生管理技術の発達により、四季醸造も行いやすくなっている。 寒造りと違って蔵人らを通年雇用できる、設備を遊ばせておく期間がないので効率的、大量生産に向く、などのメリットもあり、主に大手蔵元を中心に採用されている。
その地方独特の酒。 地域の食文化などに根ざした酒質や特徴を持つものが多く、好酒家の間では昔から旅行時に特産物を使用した食事に合わせて楽しむものとされていた。 流通やインターネット通販が発達した現代では、自宅にいながらにして全国の地酒を購入することができるようになり、味わいが平均化するなど様相が変化してきている。 近年ではあえて地元産の酒米のみを使用するなど原料を限定することでさらに差別化を図るケースも増えている。
蔵元自身が田んぼを所有し、仕込みに使う酒米を栽培すること。また、その酒米。 究極の地産地消のかたちであり、ヨーロッパのワイン蔵のドメーヌ(ブドウの栽培からワインの醸造までを一貫して行う醸造法)とも関連付けられ、近年注目を浴びる方式といえる。 ただし、土地の確保、時間・人材の確保、栽培技術などクリアすべき課題は多く、簡単に行えるものではない。
利き酒に使用される猪口。利き猪口。 白い器の底に青い線が描かれており、白い部分で色味を、青い部分で照りを確認する。
酒造りに適した品種の米のこと。食用米に比べて粒が大きく、デンプン質である心白が大きいのが特徴。 高級米である山田錦をはじめとし、全国各地で様々な品種が栽培されている。
お酒を運んだり呑んだりするための器。 瓶、徳利、猪口、ぐい呑み、片口、盃など、容量も使用目的も様々なものがある。 呑むときの雰囲気や手触り、口ざわりもお酒の味に影響を及ぼすため、状況に応じて気に入った酒器を用意するのも日本酒の楽しみの一つといえる。
味が濃く、香りが濃厚なお酒。
熟成によって発生する香りのうち、好ましいもの。
酒の持つ味わいなどの特徴。 五味のバランス(特に甘い、辛い)、コク、キレ、味の濃淡、香りの強弱などで区別される。 気候条件や食習慣で好まれる味わいがある程度決まるため、地域ごとに近しい酒質を持つことが多い。
税法上で「酒類」に分類される飲料にかけられる税金。 現在は製造時ではなく出荷時にかけられるようになっている。
日本国内においてアルコールを製造する際に必要な免許。酒類ごとに要件が異なり、日本酒の場合、年間製造量が60KL(約333石)以上であることなどがあげられる。
お酒を呑むと、一般的な基準を逸脱して乱れる人。オオトラ。 大抵の場合は、暴れる、物を壊す、言葉が荒くなる、攻撃的な性格になるなど、周囲に被害を与える乱れ方をする人を指す。 酒乱であると認定されると、以降呑みに誘ってもらえなくなるので注意が必要。
味が濃く、香りが淡いお酒。
特定名称酒のうち、アルコール添加を行っていないもの。 米本来の旨みが残り、香りも強すぎないためどの温度帯でも楽しめる。
特定名称酒のうち、アルコール添加を行っておらず、かつ精米歩合が60%以下で吟醸造りをしたもの。 さわやかな吟醸香と純米酒ならではのどっしりとした旨みを味わえる。
特定名称酒のうち、アルコール添加を行っておらず、かつ精米歩合が50%以下で吟醸造りをしたもの。 大吟醸特有の華やかな香りはあるものの、アルコール添加を行っていないため控えめで、純米酒らしい旨みも楽しめる。
お酒を平均以上に呑める人。あるいは、呑むのが好きな人。 笑い上戸、泣き上戸、歌い上戸など、頭に行動をくっつけて「酔うとどういう態度を示すか」を指すこともある。
もろみを搾って清酒にすること。伝統的な手法における、もろみを搾るための道具を「槽(ふね)」と呼ぶため。
小麦などを麹で発酵させて作る調味料。 日本酒と同じ黄麹を使用する。
デンプンなどから醸造されたアルコール。本醸造酒や吟醸酒において、もろみを搾る直前に香味を調整する目的で添加される。 添加量は、使用した米の重量の10%までと定められており、かつて盛んに作られていた増醸酒などのように増量目的で添加されることはない。 特定名称酒のうち、醸造アルコールを使用していないものを純米酒と呼ぶ。
酵母によってアルコール発酵させることでつくられるお酒。 醸造酒を揮発させ蒸留によってアルコール分を濃縮すると蒸留酒になる。
7月1日から翌年6月30日までの、日本酒造りにおける一年間。 BY(ブリュワリーイヤー)と省略して表記されていることが多い。
穀物や木の実、イモ類などを麹で糖化し、酵母で発酵させたもろみを蒸留して造る蒸留酒。 連続式蒸留器を使用する甲類焼酎(アルコール度数35度以下)と単式蒸留器を使用する乙類焼酎(アルコール度数45度以下)があり、後者がいわゆる「本格焼酎」と呼ばれる素材の風味などを味わえる焼酎である。 本格焼酎では、米や麦、芋などのメジャーな原材料のほか、紫蘇、ゴマ、栗、わさび、わかめなど、様々な原料をもとにした商品が造られており、酒粕を使用した粕取り焼酎というものもある。
醸造酒を蒸留することで高いアルコール度数を得たお酒。 蒸留を繰り返すことで100%に近いアルコール度数を得られるが、実際には20%~50%程度のものが多い。 焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン、ラムなどが良く知られている。
食事を摂る前に呑むお酒。 乾杯に使用されたり、前菜の前に胃腸を刺激し食欲を増進する目的で呑まれる。 日本酒の場合、爽酒や薫酒に該当するもの、例えば発泡酒やよく冷やした辛口の吟醸酒などがふさわしい。 空腹状態で呑むといつもよりも速いペースで呑み進んでしまい、食事がはいらなくなったり最終的に悪酔いしてしまう可能性もあるため、注意が必要。
食事のあとにデザートのように呑むお酒。 日本酒の呑み方としてはあまり一般的ではなかったが、洋酒の文化に習って徐々に広まった。 満足感を得られる甘口のお酒や熟酒、貴醸酒のような味の濃いお酒がふさわしいといえる。 また、たくさん呑むようなものではないので、いつも呑むお酒よりも品質の良いものを少しだけ、という楽しみ方も。
もち米やみりん、焼酎などを使って作られるお酒で、日本酒ではあるが清酒ではなくリキュールとして分類される。 強い甘みと独特のコクがあり、現代では主に桃の節句の際に供される。甘酒とはまったく別のもの。
イタリアやオランダを源流とし、今は主にイギリス原産とされる蒸留酒。 穀物などを原料とする醸造酒を蒸留した後、ジェニパーベリーなどハーブや薬草類を加えて改めて単式蒸留したお酒で、独特の香味が特徴。 かつては薬用酒であったが、次第に嗜好品として飲まれるようになり、単式蒸留の際に加えるハーブなどの工夫によっておいしさを追及した改良が行われてきた。 現代の日本においては、カクテルのベースとして使用されることが多い。
神様に関する儀式など。祀りごと。 特に日本酒に関する場合は、三々九度や親族固めの盃、地鎮祭など、神道の儀式を指すことが多い。 儀式の中での日本酒は、塩と共に「清め」の象徴として扱われたり、神様への供え物として捧げられたり、共有する食事をあらわしたりと、様々な役割を演じている。
搾られたばかりのお酒。厳密には搾られてから醸造年度をまたいでいないものを指す。 そのため、ほとんど熟成させておらず、新酒ばなと呼ばれる独特の香りやアルコール由来の強い刺激などがある。 広義では、その年に搾られたお酒を、一般的な数ヶ月の熟成を経ていても新酒として表記することもある。
" せ "
米、麹、水、酵母を使用し、発酵させたもろみを濾した酒のうち、蒸留していないもの。 狭義の日本酒。 かつては単に「酒」といった場合清酒を指すことが多かったが、近年は食文化の多様化に伴ってその地位を失いつつある。 濁り酒の対義語として使われる場合もある。
精米時にどれだけ削ったかを表す指標。 玄米に対して減った部分の重量比で、単位は「%」。数値が大きくなるほど、より多くの部分を削ったことをあらわす。
玄米の外側を削り、雑味を取り除くこと。 日本酒造りにおいては食用米よりも多くの部分を削り、中心部のデンプン質のみを使用する。 熱による変質や割れ等を防ぐため、専用の精米機で長時間かけて行われる。
精米時に、どれだけ削ったかを表す指標。 玄米に対して残った部分の重量比で、単位は「%」。数値が小さくなるほど、より多くの部分を削ったことをあらわす。
西暦1926年から1989年の間の期間を指す。 日本酒の歴史においては、第二次世界大戦の勃発による業界の衰退や物資が確保できないことによる減造、闇酒、それに対抗した三倍増醸酒発明など、全体的に見ても暗い要素が多い。 終戦から中期の高度成長期には、三増酒の蔓延と洋酒の台頭により日本酒離れが加速。 1973年から減少に転じた消費量は歯止めがかからず、いまも減り続けている。
それぞれ、西暦1493年から1573年と1573年から1603年の間の期間を指す。 日本酒の歴史においては、全国各地で独自の酒造りが行われ、現在まで続く地酒文化の土台が出来上がった時代といえる。 特に1582年に発明された「十石入り仕込み桶」により大量生産が可能になり、手にはいりにくい希少品から比較的手にはいりやすい嗜好品になったことで、需要が増大し品質も向上した。 そのためか、この時期の戦国武将には、お酒にまつわるさまざまな逸話を持つ人が多く見られる。
「独立行政法人 酒類総合研究所」が毎年4月に開催している新酒の鑑評会。 第一回は1911年で、優秀な酵母の発見や蔵毎の技術向上を目的として開催された。 戦争により一時中断したこともあるものの、100年以上の歴史を持つ権威ある会である。 「製造技術と酒質の現状及び動向を明らかにし、もって清酒の品質向上に資することを目的とする」としており、優劣を競うコンテストというわけではないが、優秀な酒質・味を認められた酒には賞が与えられるため、酒や蔵の実力を客観的に評価するバロメータとして利用されているケースも多い。
" そ "
味が薄く、香りが淡いお酒。
酒母を作る際に、天然の乳酸菌を呼び込むのではなく、純粋培養された乳酸を添加する手法。 雑菌の混入リスクが小さく、酒母作りの期間も半分ですむなどのメリットがある。