日本酒の味の表現

日本酒

日本酒に限らず、どんなものでもはじめて味わった頃は「おいしい」か「おいしくない」でしか評価できないものです。

でも、色々な種類を試しているうちに、「おいしい」の中にも様々な方向性があり、しかもそれぞれに高低・濃淡があると感じるようになります。 特に日本酒は多種多様な香りや味わいの成分が複雑に絡み合っており、どんな味なのかを表現する言葉もたくさん必要なのです。

あなたにとって「おいしい」日本酒が、具体的にはどんな味なのか説明できるよう、味や香りの表現を見てみましょう。

日本酒の香りの表現について知りたい方はこちら

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日本酒は5つの味のバランスが大切

複雑そうに思える日本酒の味わいですが、基本的には「甘味」「酸味」「辛味」「苦味」「渋味」の5つの味のバランスによって成り立っています。

おいしい日本酒とはこのバランスが取れているものなのです。

「甘味」 穀物や蜜に例えられるやさしい甘さ
稲

アルコール発酵は原料に含まれる糖分を酵母がアルコールと二酸化炭素に分解することですが、このとき分解し切れなかった糖分が日本酒の甘味になります。

甘味といっても砂糖のような強烈な甘さではなく、お米をよく噛んだときに口の中にじんわりと広がるような優しい甘さ、栗や芋の持つほくほくした甘さが中心です。

また、やや甘口ですっきりとした銘柄は、蜜やシロップを溶かしたようなさわやかな甘さと表現されることもあります。

「酸味」 ヨーグルトや果物のような色々なタイプの酸味
りんご

甘味と並んで日本酒の味わいを決定付けるのが酸味です。

日本酒の発酵過程は非常に複雑で、何種類もの菌類がリレーのように次々に関わってくるのですが、その中でも重要なもののひとつに「乳酸菌」があります。

この菌が働くことによって、ヨーグルトのようなまろやかな酸味が生まれるのです。

また、乳酸以外にも原料のお米や他の菌類に由来するリンゴ酸やコハク酸などが含まれており、その種類やバランスによってははっきりとした刺激的な酸味が出ることもあります。

フルーティな香りとしっかりとした酸を持たせることで、果物のような印象を持たせた銘柄も増えてきています。

「辛味」 スパイシーではなくドライな感覚
お猪口

日本酒で言う辛味とは、香辛料のような感覚ではなく甘くないこと、つまり「スパイシー」ではなく「ドライ」のほうを指します。

日本酒は醸造酒の中ではアルコール度数が高いほうなので、多少糖分が含まれていてもアルコールの刺激のほうが勝ってドライに感じるものが少なくありません。

一時期は辛味の強い、いわゆる「辛口」がもてはやされたことから、あえて甘味や他の味を取り除いたお酒が多く作られたこともありました。

しかし、一般的にはただ辛いだけのお酒がおいしいことはあまりなく、他の味とのバランスが取れた上で辛味も感じられるのがいい日本酒だとされています。

「苦味」 味覚を引き締めるほどよい苦味
日本酒と米

意外に感じるかもしれませんが、おいしい日本酒にはほどよい苦味も含まれています。これはアルコールや酵母などの菌類に由来します。

甘味や酸味のしっかりしているお酒は、最初のうちはおいしく飲めるのですが次第に飽きてきてしまいます。

しかし、そこにわずかな苦味が加わると、味覚が刺激され全体の味わいが引き締まって感じられるのです。

「渋味」 炭酸水の後味のようなかすかな渋味
炭酸水

苦味と同様、渋味も良い日本酒の味わいにアクセントを与えてくれます。

渋いといってもお茶などのようなはっきりしたものではなく、炭酸水の後味に感じるようなかすかなもの。

これによって、日本酒の味わいに複雑さや奥深さが生まれます。

日本酒の味わいの表現を楽しもう

熱燗の日本酒

日本酒の味わいの説明を見ていると、専門用語のような表現が多く使用されていることに気付くのではないでしょうか。

その中でも特に有名なのが、「キレ・コク」という表現です。

これは味わいの変化や持続性を示しており、キレは後味がすっと潔く消えること、コクは味わいが豊かに変化しながら持続していくことを表します。

ただ、「味わいが変化しながらある程度続いたあと急激に消える」など、コクもキレもある状態も存在するため、甘口・辛口のような対立する表現ではありません。 (キレの反対は押し味、コクの反対は大味です)

日本酒独特の味わい表現としては、「端麗(たんれい)・濃醇(のうじゅん)」も有名です。

端麗は味わいがすっきりしていることで、よく辛口とセットで使用されます。

濃醇はその逆で味わいが濃厚であること。

樽酒
ただし、濃厚さの方向性や度合はいろいろあるため、こちらは必ずしも甘口とは限りません。 5つの味わいのバランスが取れていることを「ゴク味がある」、バランスが取れていないことを「荒い」と表現しますが、人によっては荒い方をおいしいと感じることもあるのが日本酒の難しいところ。

良くない味わいというニュアンスを持つ言葉としては、渋味の強すぎる「収斂味(しゅうれんみ)」、時間経過で劣化した「老ね(ひね)」が良く使われます。

そのほか、日本酒独特の表現として吟醸酒などに感じるあっさりとした旨味の「吟味(ぎんあじ)」、甘さは感じないものの旨味成分が多くて辛味を感じにくい「旨口」などもあります。

自分好みの味わいの日本酒を見つける方法

「日本酒度」「酸度」などの数値の意味を知る

酒蔵のサイトや専門店の値札などを見ると、「日本酒度」や「酸度」などの数値が表示されていることがありますが、これは日本酒を選ぶ際のヒントのひとつです。

日本酒度は、そのお酒に含まれる糖分とアルコールの割合から算出する数値で、そのお酒の比重を表しています。

大辛口 辛口 やや辛口 普通 やや甘口 甘口 大甘口
+6以上 +5.9 〜 +3.5 +3.4 〜 +1.5 +1.4 〜 -1.4 -1.5 〜 -3.4 -3.5 〜 -5.9 -6以下

数値がプラス側に振れるとアルコールの割合が多く一般的には辛口に、マイナス側に振れると糖分の割合が多く一般的には甘口になります。

酸度はその名の通りそのお酒に含まれる酸の割合を示します。

数値が大きいほど酸が強く、小さいほど酸が弱くなります。

「甘いお酒が好き」「すっぱい日本酒は苦手なので避けたい」など、好みの方向性がはっきりしている場合は、数値を参考にして選択肢を絞ることができるのです。

ただし、厳密な味の感じ方はそれぞれのバランスによって変化するため、ひとつの数値だけを基準として判断するのはやめましょう。

甘口・辛口の考え方 便利な表現だけどあくまで目安に

甘口・辛口とは、その日本酒を甘く感じるか辛く(ドライに)感じるかという表現で、現代でも日本酒のタイプをざっくりと示すのに良く使用されています。

なぜ「ざっくり」かというと、お酒を甘く感じるかどうかは様々な要因が絡み合って決まるため、一概に計算などで算出するのが難しいからです。

実際、前述の「日本酒度」「酸度」を利用した「甘辛度」という指標も存在していますが、それ以外の要素によっては数値どおりに感じられないためあまり使用されていません。

地域によって甘口・辛口の境界が変動することもありますし、同じお酒でも温度によって感じ方は変わります。

体調や肴によって同じ人でも味覚が変化することを考えると、甘口・辛口の差は確定的なものではなく、甘辛どちらに感じる確率が高いか、くらいの意味かもしれません。

同じ蔵・銘柄で相対的に比較する場合には役立つかもしれませんが、それ以外では目安程度に考えたほうが良いでしょう。

味と香りの強さで表す4つの分類

日本酒を飲み始めたばかりでまだ細かな違いがわからない、という方におすすめなのが、味と香りそれぞれの濃淡による分類です。

「どんな味わいか」「どんな香りか」は表現の軸が無数にありますが、「濃いか薄いか」だけであればある程度きれいに相対化することができます。

まずはその単純な評価軸のなかで自分の好みを探り、慣れてきたら徐々に細分化していけばいいのです。

味の濃淡と香りの濃淡の掛け合わせなので、分類は以下の4種類になります。

4つの分類