日本酒は、大きく分けて6から7の工程を経て造られます。
ざっくり言うなら、「酒米を蒸し、麹にデンプンを糖に、酵母に糖をアルコールに変えてもらい、濾過する」となりますが、当然そんな単純なものではありません。
各工程ごとに、ひとつずつ具体的に見ていきましょう。
1.精米
玄米には、日本酒になるために必要なでんぷん質のほかに、脂質やたんぱく質など余分な成分がついています。これをこのままお酒にすると、雑味や雑菌の繁殖の元になるので、まずはこれを精米して除去します。
日本酒のラベルを見ると、どれだけ外側を削ったかを「精米歩合」で表記してあります。例えば、「精米歩合60%」と書いてあれば、「玄米の状態に対して6割の重さになるまで削ったお米で造りました」ということです。
一般的に、精米歩合が低いほど原料をたくさん使用し、この後の工程でも高度な技術が必要になるため、上質であるとみなされます。
なお、似た用語の「精白度合」は、逆に削った側の割合を示し、例えば「精白度合40%」とあれば「玄米の外側4割を削りました」という意味になり、精米歩合は60%ということになります。
2.蒸し
精米が終わったお米は、精米歩合に応じた時間浸水し、その後「甑(こしき)」という大きな蒸し器のようなもので蒸し上げられます。
蒸し米は水分の含有量が麹や酵母にとって丁度良いので、炊いたお米より酒造りに適しているのです。
3.麹づくり
蒸し米が出来上がったら、ちょうどいい温度まで冷ましてから麹のもと(種麹)を振りかけて繁殖させます。
日本酒造りの中で最も重要な工程とされ、麹がうまくできた時点で酒造りは7割成功とまで言われますが、逆に失敗するとこの先に進むことすらできなくなってしまうため、24時間体制で見張りながら、慎重に進められます。
ちなみに、日本酒に用いられるのは味噌や醤油などと同じ黄麹菌です。
4.酒母づくり
麹が出来上がったら一部を水と蒸し米と混ぜて、ここに酵母菌を投入して増やします。これを酒母と呼びます。
麹菌が蒸し米のでんぷんを糖に変え、これを酵母菌が食べて増えていきます。
かつては蔵に住み着いている天然の酵母を用いていましたが、品質や生産量が安定しなかったため、明治頃から純粋培養した酵母を添加する方法に切り替わりました。
ただ、この工程の前半で、麹が糖を作っている段階で雑菌が繁殖しないようにするために、通常は精製した乳酸を添加しますが、これを蔵に住み着いている乳酸菌に頼る手法があります。
厳しい温度管理が求められ、手間も時間もかかる手法ですが、野生酵母や雑菌との生存競争を経験するため酵母が強くなり、力強い味の熟成に向いた酒を作ることができるため、現在でも一部の蔵で用いられています。
5.もろみづくり
正しくは、単に「仕込み」「造り」と呼ばれる工程で、「アルコールを発生させる」という大雑把な意味合いで言えば、酒造りのメインともいえます。
いよいよ、出来上がった酒母に蒸し米と麹を加え、お酒に変えていくのです。
ただし、一度にすべての材料を混ぜてしまうと酵母がうまく働けないため、3回に分けて少しずつ加えます。これを「三段仕込」と呼びます。こうすることで酵母が元気なまま発酵が進むため、最終的には醸造酒としては異例なほど高い20度近いアルコール度数が得られます。
麹菌がでんぷんを糖に変え、酵母が糖をアルコールに変えるという二つの発酵が一つのタンク内で同時に進む「並行複発酵」は、蔵人たちの見守る中、20~30日かけてゆっくりと進んでいきます。
6.上槽
もろみづくりの工程が終わったら、純米酒以外は微量のアルコールを添加した後、機械や槽(ふね)と呼ばれる昔ながらの絞り機によって絞られます。
こうして酒粕と分離した液体が、正式に「清酒」と呼ばれるお酒です。
7.火入れ、貯蔵
絞った直後はまだ不純物が残っているので、休ませて滓が沈んだ後濾過します。その後、温度を65度まで上げて殺菌します。これを「火入れ」といいます。
火入れは、貯蔵・熟成のあと、瓶詰めの際にももう一度行われますが、中にはこの二度の火入れを行わないものもあります。
こうして、約半年から一年の時間を経て、私たちの元へ日本酒がやってくるのです。