造り手の後継者不足 印刷する

 日本酒の消費量は年々減り続けており、いまやアルコール全体の1割にも満たなくなってきています。
 そのため、販売数が減ることでビジネスとして成立しなくなったが次々と廃業休業に追い込まれています。
 ただ、一年に30件以上ものペースで蔵元が減っていっている理由はそれだけではありません。
 現在日本酒の造り手は、深刻な後継者不足に悩まされています。

 もともと、日本酒造りは楽な仕事とはけして言えません。
 仕込みは寒造りの場合10月頃から3月頃までの冬季、それもお酒造りに必要な水や環境条件などから、多くの蔵が深い雪や厳しい寒さに見舞われます。

 大量の米やもろみは重く、これらの運搬や巨大なタンクの攪拌、板状に出来上がる数十キロの酒粕はがしなど、よほど高度に自動化されていない限り、全ての工程が体力仕事といえます。
 近年は科学的な分析やデータの蓄積も進み、温度や各原料の成分などを管理しやすくなったとはいえ、生き物が相手の酒造りはマニュアル通りやればおいしくできる、などというものではなく、失敗すればタンク一本分がまるまる商品にならないという危険性もあります。
 そして、そこまで大変な思いをしても、日本酒の利益率は平均約2割前後。大儲けを期待できるような商売ではないのです。
 こういった背景から、若い人が酒蔵業界にポジティブなイメージを持ちづらく、それどころか今現在酒造りを担っている大人たちからしても積極的な勧誘がしづらいため、そもそも進路の選択肢に入りづらくなっているという側面もあります。

 また、かつて酒造りは冬季に仕事のなくなる農家、漁師たちの出稼ぎのひとつでもありました。
 しかし、今はハウス栽培や遠洋漁業など技術の進歩にともなう冬季の本業や、インターネット上をはじめとする副業の選択肢の多様化から、無理に出稼ぎに出る必要がなくなりつつあります。
 そもそも、農業などの第一次産業自体担い手が減少しており、蔵人になりうる人材の確保どころではないとも言えます。

 お酒造りは昔から「酒屋一代」とも言われ、杜氏や蔵人が変わると、まったく同じ手順・原料で造っても味が変わってしまうといわれています。
 工業というよりは職人仕事に近い酒造りの「技」は一朝一夕で受け継げるものではなく、そういう意味ではまだ醸造を続けている蔵でも、すでにその味が失われてしまうことが確定的になっている、というケースも多いはず。
 今のような後継者不足が今後も続けば、伝統の消失はさらに加速していってしまうのです。