日本酒の登場する漫画 印刷する

 マンガが、「子供向けのもの」だけではなく「大人も楽しめる書物」として認識されるようになったのはそんなに昔のことではないようです。
 近年ではマンガも、小説や映画、音楽のように年齢を問わず親しまれており、そのためか日本酒を扱う作品も増えてきています。
 ここでは、それらの中から代表的なものをいくつかご紹介します。

尾瀬あきら著:「夏子の酒」「奈津の蔵」(講談社)、「蔵人」(小学館)など


 「夏子の酒」は、亡き兄の志を受け継ぎ、幻の酒米の復活とそれを使用した酒造りに挑む夏子の奮闘を描いた作品。
 90年代の「日本酒を見直そう」という流れのさきがけとなり、後にドラマ化もされました。
 実際に作者が酒蔵に取材をして製作されており、モデルとなるや酒米も存在しています(新潟県、久須美酒造)
 「奈津の蔵」は、夏子の祖母・奈津の物語で、昭和初期の蔵元をテーマにした作品。

 「蔵人(クロード)」は日系三世のアメリカ人・クロード・バターメイカーが、かつて栄えた酒蔵を再興すべく杜氏として奮闘する物語です。
 どの作品も、日本酒に対する深い愛情と造りに携わる人々への敬意が感じられます。

雁屋 哲、 花咲 アキラ著:「美味しんぼ」(小学館)


 いわずと知れたグルメマンガ界の長寿作品。
 新聞社に勤務する主人公たちが、「究極のメニュー」作りを通じて本当に美味しい食事とは何かを追求していきます。
 作者自身が取材を重ね、マスコミやコマーシャルに踊らされるのではない「本物」を紹介し、時にはヒット商品や業界の闇を暴く、という作風で根強いファンをひきつけているようです。
 日本酒についても、三増酒全盛期の頃に本当のお酒の造り方や味わいを紹介し、低価格低品質なお酒で失望せずに本物の美味しさを知ろう、と日本酒離れの問題提起をしています。
 連載を持っていて時間が限られる関係か、若干取材に偏りがある点、作中に矛盾がある点なども見られますが、それも含めて「情報を鵜呑みにせず自分で判断する」という姿勢について考えさせられる作品といえるでしょう。

 

酩酊女子製作委員会著:「酩酊女子 ~日本酒酩酊ガールズ~」(ワニブックス)


 日本酒好きな作家が集まり、「女性と日本酒」をテーマにした様々なイラストと小説で作られたアンソロジーです。
 マンガというよりはライトノベルや情報誌に近いイメージですが、複数の作家さんの描く美麗なイラストはただの小説集にはないイメージ喚起力を持っています。
 作中には実在するお酒が登場し、具体的な銘柄の紹介ページも設けられていますので、気に入った作品の世界に浸りながら同じお酒を楽しむこともできます。
 また、「酩酊女子製作委員会」は、他にも日本酒関連の書籍の出版や同人活動、各地での日本酒イベントの開催なども行っているようですので、興味のある方はブログをチェックしてみましょう。

 

ラズウェル細木著:「酒のほそ道」(日本文芸社)


 一部の男性読者、特に中年以降のお酒好きの男性に支持されている作品。
 肩肘張らずに楽しむお酒の世界が、独特のタッチで描かれています。

 居酒屋でのこだわりやお酒の選び方、一緒に飲む人との関係やいざこざまで、酒飲みならばつい「あるある」と思ってしまうシーンも多いのでは。
 情報収集と勉強を重ねておいしいお酒を追求するのももちろん楽しいのですが、それだけが「美味しいお酒」ではないと思わせてくれる作品といえるでしょう。

石川雅之著:「もやしもん」(講談社)


 菌類を肉眼で見る特殊能力を持つ大学生・沢木が、活躍したりしなかったりする日常系のマンガです。
 発酵食品全般についてがテーマですが、沢木の生家が「もやしや」(日本酒や味噌醤油造りに使用する種麹を製造する商売)であることもあり、作品全体を通じて日本酒を詳しく取り上げています。
 特に、実際に日本酒を造る工程を描いた部分はかなりわかりやすく、菌類がどう作用しているのか、なぜ蔵見学の前に納豆を食べてはいけないのかなどがしっかり理解できるのではないでしょうか。
 ちなみに、山梨県の萬屋醸造店では、もやしもんとコラボしたお酒「春鶯囀×もやしもん」を販売しています(限定生産品なので売り切れの場合もあります)

 

新久千映著:「ワカコ酒」(徳間書店)


 お酒好きのOL・ワカコが、日々いろいろなお店を飲み歩く、というシンプルな構成の作品です。
 一話は4~10P程度と短く、ひとつのお話にひとつのがテーマとして取り上げられます。
 会社の飲み会の回など一部の例外を除いて、基本的にワカコの一人飲み、というのも感情移入しやすいポイント。
 日本酒だけではなくビール焼酎ワインなども登場しますが、全編を通してひたすらおいしそうなお酒のシーンが続き、一冊読み終える頃には飲みに行きたくなること請け合いです。
 個人的には、第一話の「鮭と冷酒」の回が印象深く、これを読んで以来定期的に塩鮭を買ってきては「皮が美味しくなるように」焼いて肴にするようになりました。