酒米 印刷する

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田んぼ

 日本酒を造る際に不可欠なお米。

 お酒のラベルを見てみると、使われているお米の品種が書いてあるものが増えてきましたが、いくつも見ていくと、普段炊いて食べている品種とは違うことに気づきますね。

 そのまま食べるためではなく、お酒を造るためのお米を酒造好適米、もしくは酒米と呼びますが、一般的なお米とどう違うのでしょうか。

酒米の特徴

 お酒造りの中でのお米の役割として、麹菌を繁殖させる、酒母の中で酵母を繁殖させる、もろみのなかで発酵の原料となるの三つがあげられますが、酒造好適米は主に作りに使用されます(麹米)。

 特定名称酒では、酒母や仕込みに使うお米(掛け米)にも酒造好適米を使用することが多くなっているようです。なので、当然性質もそれに合ったものになっています。

1.心白の割合が高い
米粒

 心白とは、お米の中心にあるデンプン質の部分のこと。酒米を光に透かして見ると、外側が半透明で真ん中が白っぽくなっていることがわかりますが、日本酒造りでは雑味のもととなる外側の半透明の部分はできるだけ削り落とし、白っぽく見える心白の部分を利用します。心白の割合が高いということは、それだけ日本酒造りに使える部分が多いということなのです。

 また、心白部分が白く見えるのはでんぷん質の間に微細な隙間がたくさんあるからで、この隙間があることで麹が米の内部に向かって増殖する、いわゆる破精込みが起こりやすくなります。

 心白が大きいと、食べるとぼそぼそしておいしくないのですが、酒米としては非常に優秀であると言えます。

食用ではない
2.粒が大きい
籾

 日本酒造りに使用するお米は、一般的に食べるお米よりもずっとたくさん削って使用するため、もともとのサイズが小さいと精米中に砕けてしまいます。その為、粒が大きいほうが日本酒造りには適しているのです。

 ただ、最近は精米技術の向上もあり、一概に「大きければよい」とは言えなくなってきているようです。

 従来は、酒米の中でも粒が大きく、たくさん精米することのできる山田錦がなくてはおいしいお酒が作れない、さらには山田錦さえ使用していれば高品質なものが作れるとまで言われていたことがあったそうですが、近年の地酒の流通と嗜好の多様化に伴い、酒米も様々な特徴のものが作られてきており、中には酒造好適米としては小ぶりな品種も出回っています。

 また、粒が大きいからか稲の高さ(稈長)や穂の長さ(穂長)も高く長いものが多かったのですが、近年では風で倒れてしまうことを避けるために、背の低い、短い品種も作られています。

3.栽培が難しい
収穫

 これはどちらかというと短所的な特徴なのですが、酒造好適米は比較的病気や虫に弱く、風で倒れてしまいやすい品種が多くなっています。また、育成に必要な養分も多く、同じ面積で取れる量も少なめです。

 その為、一般のお米に比べて価格が高く、山田錦の特A地区で作られた最高級品になると、食用米の10倍以上の値段がつくこともあります。

 特定名称酒は普通酒に比べて高い値段がついていますが、手間隙がかかっているほかに、原料の価格にこれだけの差があるのであれば、価格の差にも納得ですね。

地域別の主な酒米と特徴

地域別酒米

 東西に長く伸びる日本列島では、地域によって栽培できるお米の品種も違ってきます。

 近年では地元産の酒米、さらには単一の品種のお米に限定した酒造りをする蔵も増えており、それぞれ米の特徴を生かした銘柄を開発しています。地域別に、主な品種名と特徴を見てみましょう。

北海道
  • 吟風
    北海道岩見沢市で開発された、道産の酒米です。大粒で心白があるなど、しっかりと酒造好適米の特徴を持っており、平成15年にはこれを100%使用したお酒が全国新酒鑑評会で金賞をとるなど、全国区で戦える実力を持っています。
  • その他の品種
    初雫、彗星など
東北地方
  • 亀の尾
    酒造りに使用されているが、規格的には一般米にカテゴライズされます。 明治時代から使用されている伝説的な酒米であり、五百万石、ササニシキ、コシヒカリなどの交配元となった優秀な交配種でもあります。
  • 出羽燦々
    山形県で、「県内産の酒米で吟醸酒を造りたい」という願いから作られた品種。 寒さや風に強く、山形県で使用されている「山形酵母」と良く適合する、端麗酒質を得やすいなどの特徴があります。 近年、注目されている品種のひとつです。
  • その他の品種
    豊盃、吟ぎんが、夢の香など
関東甲信越地方
  • 五百万石
    1957年に誕生し、現在では全国で作付けされる酒米の過半数を超える、日本で一番ポピュラーな酒米。 使用するとすっきりとした辛口の酒に仕上がるとされており、地酒ブームの口火を切った新潟の「淡麗辛口」な酒質を決定付けたといわれています。 他の米よりも早く実る「早稲」であり、台風シーズン前に収獲できるというメリットがあるものの、代わりにスズメなど鳥類による食害を受けやすい品種でもあります。
  • 美山錦
    1978年に長野県で作られた、比較的新しい品種。 寒冷な土地での栽培に適しており、長野県のほか、主に東北地方で栽培されています。 米粒は山田錦には及ばないものの大きめで、バランスの良い味わいの酒に仕上がりやすいとされます。
  • その他の品種
    渡船、越淡麗、誉富士、金紋錦など
関西地方
  • 山田錦
    通称、「酒米の王様」。 米粒が大きく心白割合が著しく高い、高精白でも砕けづらいなど酒米に適した特徴を持つが、収獲直前には130cmほどに成長するため倒れやすく、病気などにも弱いなど、栽培が難しい品種でもあります。 1923年に兵庫県明石市で作られ、現在では新潟を北限として全国で栽培されていますが、特に兵庫県の一部は特A地区、A地区に指定されており、ここで栽培されたものは他の地域産のものに比べて良質であるということで、酒米の中でも高値で取引されています。
  • その他の品種
    愛山、山田穂、新山田穂、改良山田錦、灘錦など
中国、四国、九州地方
  • 雄町
    江戸時代から使われている歴史の深い酒米で、昭和中期には山田錦に押されて一度絶滅の危機を迎えたが、その後復活。 現在では、地酒ブームや多様化の波に乗って再度高い評価を得、主に岡山県で栽培されています。 成長すると丈が約1.7mほどにもなるため、風に弱く栽培が難しい品種とされています。 山田錦や五百万石の交配元品種です。
  • 八反錦
    1973年に、従来からあった「八反」と呼ばれる酒米のシリーズ(いくつも種類がある)の短所を改良して作られた、主に広島県で栽培される酒米です。 栽培地の標高によって適正が異なる「一号」と「二号」があります。
  • 強力
    戦後に一度絶滅したものの、平成にはいり復刻された品種。 現在は品種本来の力を保存する目的で、復刻した鳥取県内以外での栽培が行われないようにしているとのこと。 長期の熟成で深い旨みが生まれるという特徴を持っています。
  • その他の品種
    八反、神力、土佐錦など