体内で起こっていること 印刷する

 日本酒に限らず、お酒を飲む方ならほとんどの方が一度は体験している「二日酔い」。
 人によって程度や症状は様々ですが、胸のむかつきや吐き気、頭痛、倦怠感など、お酒を飲んだ次の日に起こる不快な症状を指します。
 せっかく楽しく飲んだ記憶も、次の日のひどい二日酔いのせいで台無しに、なんて経験をされた方も多いのではないでしょうか。
 ここでは、お酒を飲んだあと体内で起こっていることの化学的な解説、酔い・二日酔いのメカニズムをご紹介します。

酔っ払うということ


 口から体内に入ったアルコールは粘膜から急速に吸収され、胃と小腸の上部でほぼ全てが血管内に取り込まれます。
 血液に乗ったアルコールはまず肝臓に運ばれ分解が始まりますが、すぐに全てを分解することはできず、大部分は一旦心臓を経由して全身に回ります。これが脳に達することでアルコール濃度に応じて部分的に麻痺が起こり、酔いの症状が現れるのです。

 症状の出方は体重(血液量)、分解能力、アルコールの吸収速度、脳細胞のアルコール耐性、さらにはその日の体調などによって大きく変わりますが、平均的には血中アルコール濃度ごとに次のように分類できます。

血中アルコール濃度 0.02~0.04%

乾杯

 理性を司る大脳新皮質が少しだけ麻痺するため、緊張がほぐれ少し陽気になったり饒舌になったりします。酔っているという自覚はほとんどありませんが、判断能力や反応速度が鈍っているためこのレベルでも精密な作業や車の運転は危険です。日本酒で言うと、わずか3~40ml程度で、です!
 「一口でも飲んだら飲酒運転」と覚えておくべきですね。

血中アルコール濃度 ~0.1%

盛り上がる

 さらに大脳新皮質の麻痺が進み、感情が表面に出やすくなります。大勢で飲んでいて普段より盛り上がるのはこの段階からと言えます。
 逆にこの段階を維持するような飲み方を心がければ、おおむね楽しいお酒になるとも言えるでしょう。難しいかもしれませんが…。

血中アルコール濃度 ~0.15%

酔っ払い

 理性的な判断が難しくなり、過剰な反応を返すようになります。いわゆる「泣き上戸」「笑い上戸」が表れはじめ、周囲からも酔っているな、と認識されるレベルです。
 飲むスピードや体重にもよりますが、日本酒換算でおおよそ3~5程。平均的な分解能力でも、遅い時間から飲み始めると朝までにアルコールが抜けきらない可能性が出てきます。次の日に運転の予定がある場合は注意が必要です。

血中アルコール濃度 ~0.3%

転倒

 血液中のアルコール分量が増えると、麻痺の範囲が脳の周辺系から中枢系に広がっていきます。このレベルでは小脳まで範囲が広がり、足元がおぼつかなくなったり呂律が回らなくなるなど、理性が関わらない単純運動にまで影響が出るようになります。
 このあたりが、なんとか自宅のベッドに無事たどり着ける限界といえるでしょう。

血中アルコール濃度 ~0.4%

目潰し

 記憶を司る海馬にまで麻痺が広がります。「酔って記憶が飛んでしまう」のはこの状態のときです。正しくは記憶が消えるのではなくてそもそも記憶できない状態なのですね。
 理性の部分はほぼ働いていないため、普段の性格とは関係の無い、常識では考えられない行動に出たりします。
 面白い失敗のエピソードくらいで済めばよいのですが、人間関係や社会的信用、さらに健康や命まで危険に晒している状態といえます。

血中アルコール濃度 0.4%~

寝る

 さらに麻痺が進み、生命維持のコントロールにまで影響が出始めます。いわゆる急性アルコール中毒の状態です。
 通常はこの状態になる前に飲酒を続けられなくなりますが、一気飲みや強いアルコールのがぶ飲みなどの異常に急速なアルコール摂取をした場合、麻痺が追いつかずこのレベルまで到達してしまうことがあります。
 脳を超えて延髄まで麻痺が広がっていますので、放っておくとアルコールの分解よりも自律呼吸が止まるほうが早い危険があります。速やかに病院に運び、処置をする必要があります。

アルコールの分解


 前述のように、血液中のアルコール濃度がどんどん上がっていくと大変危険ですので、人体は頑張ってアルコールを分解・無害化しようとします。

 胃や小腸から吸収されたアルコールは、肝臓内でまずアルコール脱水素酵素によって「アセトアルデヒド」になります。しかし、このアセトアルデヒドも大変毒性が強い物質で、体内に回ると吐き気や不快な動悸、血管拡張による頭痛などを引き起こすのみならず、がんの原因にもなります。
 そこで、肝臓はアセトアルデヒドをさらに分解して無害な「酢酸」にします。

 これは主にアルデヒド脱水素酵素という酵素の働きなのですが、実はこの酵素の分解能力には、人によって遺伝的に強弱があります。
 日本人(モンゴロイド)の場合、人口の半分ほどは正常な代謝を見せる「活性型」ですが、45%は分解能力が活性型の1/16とかなり低い「低活性型」、さらに5%ほどはほぼまったく分解できない「不活性型」です。
 これらの人は遺伝的にアルコールが苦手なので、「訓練すれば飲めるようになる」と無理に飲酒しても強くはなれません。むしろ肝臓や腎臓をはじめ、体に大きな負担を与えてしまうことになり大変危険ですのでやめましょう。
 また、周囲に飲めない人がいる場合には、「アルコールは向き不向きのある飲み物」ということを認識し、無理にすすめないようにしましょう。

 なお、酢酸は体中でエネルギー源として消費され、最終的には二酸化炭素と水に分解されて排出されます。

 過剰にアルコールを摂取すると、アルコール由来のエネルギー源が増えることになり、相対的に糖分や脂質の消費が抑えられ、結果として太る原因になることもありますので、そういう意味でも飲みすぎには注意が必要ですね。

そして二日酔いへ…


 アルデヒド脱水素酵素が通常通り働く「活性型」で、体内に入ったアルコールが適量であった場合、二日酔いは起こりません。前述の通り体内で分解が進み、起床する頃には無害化されているからです。(アルコール分解のために内臓は夜通し働いていますので、やや寝不足を感じるかもしれませんが)
 しかし、体内の酵素にも一定時間で分解できる限界があります。
 一般的にからだが大きい(≒肝臓が大きい、血液量が多い)方が分解力も高い傾向がありますが、それでも何倍もの開きがあるわけではなく、平均的な体重の人で1時間当たり6~8g前後のアルコールを分解できるといわれています。
 例えばアルコール度数15%の日本酒1合(180ml)には、0.15×180=27ml、(アルコールの比重は0.8なので)27×0.8=21.6gのアルコールが含まれています。これを一時間あたり7gのアルコールを分解できる人が飲むと、血液中からアルコールがなくなるまで約3時間かかります。

 逆算すると、例えば21時頃から飲み始めて翌日の朝6時頃起床する場合、分解にかけられる時間が約9時間ですので、9×7=63g、上記の日本酒だと63÷0.8÷0.15=525ml、おおよそ3合までが適量といえます。(実際には消化吸収に時間がかかり、分解スピードも一定ではないのでもう少し少なくなります)

 この適量を超えると、分解しきれなかった分のアルコールやアセトアルデヒドが体内に残り、その毒性が吐き気、胸焼け、頭痛、脱水症状による疲労感、強い自己嫌悪などの二日酔いの症状を引き起こすのです。