味と香り 印刷する

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口と鼻

 日本酒に限らず、どんなものでもはじめて味わった頃は「おいしい」か「おいしくない」でしか評価できないものです。

 でも、色々な種類を試しているうちに、「おいしい」の中にも様々な方向性があり、しかもそれぞれに高低・濃淡があると感じるようになります。 特に日本酒は多種多様な香りや味わいの成分が複雑に絡み合っており、どんな味なのかを表現する言葉もたくさん必要なのです。

 あなたにとって「おいしい」日本酒が、具体的にはどんな味なのか説明できるよう、味や香りの表現を見てみましょう。

4つの分類

 膨大にある香味用語だけで日本酒を表現すると、具体的過ぎて逆に分かりづらくなる可能性もあります。そこで、味の濃淡と香りの濃淡で、相対的に大きく4つに分類した呼び方があります。

4つの分類

 そもそも、普段味と香りを明確に分けていないため、はじめは(特に醇酒と薫酒あたりは)分かりづらいかもしれませんが、意識しながら飲んでいると、段々と「このお酒は醇酒っぽいな」とか「爽酒より薫酒のほうが好きだな」という具合に自然に分類できるようになってきます。

数字で表す味わい

 日本酒の成分を数字に表すと、味わいと各種物性や数値の間に相関関係があることが分かります。これを元に、客観的なデータとして日本酒を評価することもできます。

  • 日本酒度
    一般的には日本酒の甘さを示す単位だと思われがちですが、実際には日本酒の比重、ひいては含まれているアルコールとブドウ糖の割合を示しています。プラス側に振れているほどアルコールの割合が高く、マイナスなら糖分が多いということです。
大辛口 辛口 やや辛口 普通 やや甘口 甘口 大甘口
+6以上 +5.9 〜 +3.5 +3.4 〜 +1.5 +1.4 〜 -1.4 -1.5 〜 -3.4 -3.5 〜 -5.9 -6以下
  • 酸度
    その名の通り、そのお酒がどれだけ酸性に振れているかを示します。この値が大きいほど酸が強く、さっぱりとした味わいに感じます。逆に小さいと中性に近くなり、コクがある深い味わいを感じるようになります。
  • 甘辛度
    上記の日本酒度と酸度を利用して、そのお酒が甘く感じるか辛く感じるかを示します。具体的な式は、(193593÷(1443+日本酒度))-1.16×酸度-132.57となり、その結果によって次のように分けられます。なお、日本酒の場合の「辛い」は「スパイシー」という意味ではなく、「ドライ」に近い意味合いです。
  • 非常に辛い = -3
  • かなり辛い = -2
  • すこし辛い = -1
  • 中庸 = 0
  • すこし甘い = 1
  • かなり甘い = 2
  • 非常に甘い = 3
日本酒度と酸度

 他にも、「濃淡度(味の濃さを表現)」や「アミノ酸度(旨みやコクを表現)」などもあり、これらの数値を参考にすることで、事前にそのお酒がどんな感じの味なのかを推測することができます。

 ただ、全体的に言える事ですが、味や香りの感じ方は人により様々です。自分にとってどんな味、どんな香りかという評価を表現していくには、やはり自分自身で色々試してみるしかありません。

味の表現

口

 細かい差を感じ取れるようになってきたら、次はいよいよ味わいを分類して見ましょう。まずは味の表現からです。

  • 辛口/甘口
    上に記した、「甘辛度」で示されるのとほぼ同じ表現です。辛口は甘みをあまり感じずドライなもの、甘口は逆に甘みを強く感じるものです。ただし、糖分が発酵の過程で酵母に消費される日本酒の場合、酒粕を多く残したもの以外だと本当に甘いものは少なく、実際には「甘口」と表現されているものの大半は、次に記す「旨口」であるようです。
  • 旨口
    アミノ酸などの各種旨み成分が強く、相対的に辛さをあまり感じないもの。 お酒を飲むときには、口に入れてから飲み込み、後味が引いていくまで何段階かに分けて味を感じています。 その、それぞれの段階において、色々な表現があります。
  • 端麗/濃醇
    口に含んだときに、味わいがスッキリしているものを端麗、濃厚であるものを濃醇といいます。
  • 荒い
    口に含んだときに、味わいが一度に出てきたりアルコールの刺激などを強く感じること。日本酒に限らず、アルコール飲料は完成してからしばらく寝かせたほうが、味もアルコールの状態も安定しまろやかになります。もちろん荒いのが一概に駄目なわけではなく、「若々しくて好き」と感じる人もいれば「熟成が足りない」と感じる人もいます。
  • 収斂味
    口に含んだときに感じる酸いような渋み。口がきゅっとなるような感じを受けます。これも熟成しきっていない若い酒に多いので、上に書いた「荒い」状態の一つと言えます。
  • ゴク味
    甘い、辛い、酸っぱい、苦い、旨い、の5つを五味といいますが、これがバランスよく揃っている状態を「ゴク味がある」と表現します。
  • 吟味(ぎんあじ)
    あっさりとした旨みが感じられる状態。主に低温熟成をした吟醸酒などで感じられ、吟醸香とセットになります。
  • キレ
    後味の余韻がいつまでも残らず、すっと抜けるようなお酒を「キレがある」と表現します。よく「コク」と対にして語られることがありますが、コクは味の変化や種類が豊かでバランスが良いこと、キレはその後の後味についての評価ですので、コクもキレもある、という状態も十分ありえます。
  • 押し味
    後味の余韻が長く続くお酒は「押し味がある」と表現します。キレと対になるのはこちらの方ですね。
  • コシ
    押し味のあるお酒で、余韻がぼやけずに安定していることを「コシがある」、もしくは「コシが強い」といいます。

香りの表現

鼻

 味と同じように、香りもどの段階で感じるかによって呼び名が変わります。

段階

 日本酒の香りの表現は、ワインなどのように花や果物、ナッツなどに例えられます。ただし、造りのどの段階で現れた香りかによって、次のように呼び分けることもあります。

  • 吟醸香
    吟醸酒や大吟醸酒特有の、果物のような甘い香り。過酷な状況下に置かれた酵母菌が作り出す有機酸に起因する香りで、揮発性が高いものが多く、かつてはその成分を回収してに戻すことも行われていました。
  • リンゴ香
    吟醸香の一種。他にも、バナナ香やメロン香などがあります。
  • 新酒ばな
    新酒特有の香り。熟成すると消えていきます。
  • 熟成香
    熟成することによって発生する香りのうち、好ましいもの。逆に、熟成のさせ方が悪く好ましくない香りが発生した場合は「老香(ひねか)」と呼びます。

お酒を駄目にする香り

くさい

 老香(ひねか)のような好ましくない香りについては、実は色々な表現があります。これは主に杜氏の間や鑑評会などで使用されるもので、一般的に購入できるお酒で感じることはほぼありません。

 ただ、購入後の管理がまずかったり開栓後長期間そのままにしておくなどすると、お酒が劣化して近い状態になる可能性もあります。

  • アルコール臭
    が作り出すアルコールではなく、絞りの前に添加する醸造アルコールが生じる異臭。通常のアルコール添加では生じませんが、添加に失敗しているとお酒になじまず、その部分だけが分離したようになって異臭として感じられるのです。
  • つわり香
    発酵に失敗し発生する異臭。同様のものに酸敗臭(さんぱいしゅう)などがあります。
  • 袋臭
    醪を絞る袋の管理状態が悪く、それ自体が異臭を持っている状態で絞ったため日本酒にも移ってしまったもの。
  • 濾過臭
    濾過するときに、設備や炭などから移る異臭。
  • 火落ち臭
    乳酸菌の一種である火落ち菌が繁殖することによって発生する異臭。火落ち菌は弱酸性でアルコールのある環境と、コウジカビが生成する有機酸を好むため、日本酒自体がまさに絶好の住処になります。火落ち菌が繁殖してしまうと日本酒が駄目になってしまうため、生酒や生貯蔵酒以外は貯蔵前に火入れを施して火落ちを防ぐのです。
  • 日光臭
    直射日光などにさらされることで変化を起こし、発生する異臭。日光以外にも、蛍光灯など人工的な光でも長時間さらされると発生することがあります。保存状態の悪さに起因するので、上記の異臭のなかでは最も消費者が接する可能性があるといえるでしょう。

 こうして異臭の発生する原因を並べてみるだけでも、日本酒造りがいかに難しく神経を使う作業化が良く分かりますね。